テイルズ短編 | ナノ



愛しさはやがて束縛へ。

ルークがジュディスに相談して数日、ルークは以前よりユーリに積極的に近づくようになっていった。

「ユーリ、今日の料理当番だったよな、手伝うよ!」
「そりゃ、有り難い申し出だがお前、自分の腕前のこと忘れた訳じゃないよな?」
「うっ…じ、じゃあお皿運んで…」
「ん?この前すっ転んで皿を割ったの誰だったかなあ?」
「うぐぅ…」

それがうまくいっていないことはパーティメンバー全員が感じていたことだが。
ユーリに遠慮という名の厄介払いされたルークは他のメンバーが待っている場所とは反対側の方へとうなだれながら歩いていった。
その後ろ姿を見ながらユーリは自然とルークを捕まえようと左手が出ていたことに気づき、小さく溜め息を吐いた。

「…抑えられねぇ…このままじゃ、いつか抱き締めて…絞め殺しちまう。」

ユーリは左手をぎゅう、と握りしめ下ろすと食事の準備を始めた。

***

「はぁ…」
「あらー、どうしたの?」
「…なんだ、レイヴンか。」
「なんだって何よ、なんだって!」

ルークは背後にいるレイヴンをちら、と見るともう一度溜め息を吐いた。それにレイヴンがルークの横に並ぶと面白そうに溜め息の訳を聞くものだからルークは苦笑しつつもユーリの名前は伏せて一連の事を話した。

「なるほどねー、ルー君も青春してるわねー。うんうん、若いって良い!」
「レイヴン、何しに来たんだよ…」

慰めるわけでも、アドバイスをくれるわけでもないレイヴンにルークは頭が痛くなった。ジュディスに相談に乗って貰ったことも話すとレイヴンがさらに面白そうに口の両端をあげた。

「ふーん?それでさっきユーリにアタックしてきたけどだめだったわけ。」
「そうなんだ…って、ななな、何でユーリって……!」
「ん?ああ、だってルー君ってばわかりやすいんだもーん。」

悪戯が成功した、とでも言いたそうなレイヴンの笑顔にルークは思い切り左ストレートを決めたいと思ったがジュディスにも気づかれていた事を思い出し、ジュディスの言った通り自分がわかりやすいだけだ、と若干出かけていた左手を抑えた。

「あ、因みに皆にもバレてるわよ。」
「は?!」
「パティちゃんなんて、ユーリは渡さんのじゃ!って言ってたし。」
「!」

一瞬にして赤く染まったルークの顔にレイヴンはにやり、と笑うと気付けば今度こそルークの左ストレートがレイヴンの腹部を捉えた。それが照れ隠しだと理解できるがあまりの激痛にレイヴンは片膝をつかずにはいられなかった。少しいじめすぎたとレイヴンは思いつつレイヴンのバカ、と捨て台詞を吐いてレイヴンから離れていったルークに心の中で謝ることしかできなかった。

「おっさん、出来たぞー……っと。」
「み、見てたのね……っ!」
「……知ってたくせに。あんまいじめ過ぎてやんなよ。」
「それは青年にも言えることなんじゃない……?」

まだ腹部が痛むのかよろよろと立ち上がったレイヴンの目がユーリのアメジストの瞳を捉えた。

「青年の愛って重たそうだもんねぇ。」
「……。」
「否定無しって事は自覚有りって事よね。まぁ、だからこそ遠ざけようとしてるんだろうけど…」

終始笑みの絶えないレイヴンの茶化すような物言いにユーリは参った、とばかりに両手を肩の高さまであげた。文字通りお手上げだ、と言う意だろう。そんなユーリにレイヴンはさらに笑みを深くした。

「はぁ…あいつには余計なこと言うなよ。」
「嫌ね、言わないわよ。おっさんだってそこまで根性曲がってないっての。……青年、ほんとにそれでいーの?」
「…何がだ?」
「分かってる癖にー。まぁそれでも良いけどね、でも一回しかない人生なんだから後悔の無いよう頑張れ、若人。」
「おっさんが言うと冗談に聞こえねぇって。」

レイヴンは冗談のつもりはないわよ、と言うとユーリにちゃんと考えるように促し自分は出来た料理にありつこうと仲間達の待っている場所へ向かって歩き出した。だが数歩歩いてレイヴンは何か思い出したようにユーリに振り返るとやはりいつもの胡散臭い笑顔のまま話しかけた。

「あ!そうそう、おっさんとルー君が話してるときの殺気、あれ、おっさんだったから良かったけど他の奴だったら腰抜けちゃうわよ?」
「……。」
「んじゃねー。」

ユーリはレイヴンの後ろ姿を見ながら食えないおっさんだな、と一言呟きレイヴンと同様仲間たちの元へと歩き出した。

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