テイルズ短編 | ナノ



そして新しい仲間とともに。

翌日、ガイは借りているルークの部屋へ行くと驚きのあまり声がでなかった。現在時刻は午前6時。勿論起きていないだろうと思っていたものだから机に向かって熱心にジュードに勉強を習っている姿を見てガイは目頭が熱くなった。あんなに勉強が嫌いだった上に朝が弱かったのにな、とルークの昔を思い出しながら心の中で応援し邪魔にならないよう静かに開いた扉を閉めた。
ルークがジュードから習っているのは医学で、ルークは人を傷つけた分人の傷を治してあげたいと思った為だ。医者拾ってもらったので折角だから、とルークは医学を習うことにしたのだ。ジュードは勿論医師なので仕事をしに病院へ行ってしまう。だからルークは早起きをしてジュードが病院へ行くまでの間少しだけでも、と頼んだのだ。

「治癒術だけが医療じゃないんだよ。病気は治癒術じゃ治せないから…」
「う、うん……。」

ぽりぼりと頭を掻きながらルークはジュードの話を聞いていた。
ルークはなかなか飲み込みが早く治癒術が使えないときなどの応急処置などすぐに覚えたがそれでも肝心の治癒術が練習してもうまくできない。そこで先のフォローをジュードがいれたがそれでもルークは落ち込んだままだ。

「人には得手不得手があるんだから、気にすることないよ!それに応急処置だけでもちゃんと知ってたら救える命が格段に増えるんだから、ね?」
「うぅー…ありがとうジュード……。」

年下にここまで気を遣われるのもルークにとっては落ち込む原因になるのだがジュードは落ち込むルークの頭をポンポンと撫でた。瞬間ボン、と音がしそうなほど赤くなったルークに気付かずジュードはああ、そろそろ行かなきゃ、と立ち上がった。

「じゃあ続きは帰ってきてからね。……ってどうしてそんなに赤くなってるの?!だ、大丈夫?!熱は……」
「な、ない!平気だから!それよりまだ行かなくていいのか?時間あんま無いんだろ、ほら、いってらっしゃい!!」

押し出すように部屋から追い出すとルークは壁にもたれてずるずると座り込んだ。何やってんだろ、と小さく溜め息を吐いて先ほどまで勉強していた机の上の教材を手に取った。ふとルークはガイのことが気になった。いつもなら最近は朝早くから起こしに来るはずなのに、とガイを探しに行こうと立ち上がった。それとほぼ同時だった。
突然バタバタと慌ただしい足音が鳴り響く。それにルークは肩をビクリと震わせた。ドアから少し離れるとタイミング良く扉が勢いよく開け放された。

「ルーク!」
「ガイ?どうしたんだ…」
「悪いが時間がなくなったんだ、ここから出るぞ。」

いつもの爽やかさを失ったガイの表情から詳しい説明を受けていないルークでも何があったのか大体の見当がついた。むしろ今ルーク達を取り巻く環境のせいでそう予想せざるを得ない。
ジュードの家から急いで出ると街が賑やかになっていた。街の住民の混ざり合った話し声の内容がいよいよ予想を確信に近付けた。

「どうやら俺達がこの街に入るのを別の街から来た奴が見ていたらしい。それが噂になってるみたいだ。」

噂といえども自分達は正しく本人だ。ここで捕まってでもすればすぐにでも打ち首極刑が決まるだろう。加えてこんな所にいればジュードも匿っているなどと理由を付けられるかもしれない。捕まるわけにはいかない。ルークは垂れる汗を拭いガイに言われるまま部屋を出た。
そのまま街の外まで来て昨日ジュードと出会った山道まで来たところで漸く走り通しの足を止めた。肩で息をする二人はその場に座り込んでしまった。山道は昨日歩いた山道は下り坂。ならば当然今日は登り道だ。ルークはともかくガイですら立っているのが億劫なほど走ったのだ。当然体が不調を訴えるルークにとっては楽なもののはずがなかった。

「はあっ…!はあっ…」

滴る汗を見ながらルークはヤバイな、とそれを拭う。半袖なルークの服では拭き取ることはできず汗が腕に移るだけだが額からです邪魔なものが無くなるだけ幾分かマシであった。汗もそうだが息も一向に落ち着きを見せない。ゲホゴホと酸素を求めるというよりも何かを吐き出そうとする咳にガイも不信に思わざるをえなかった。

「どうした、ルーク…きついか?」
「へ…平気…だって……」

どう考えても平気、というには程遠いルークの様子にガイは頭を抱えたくなった。ルークの変わりたいという気持ちは本物なのだろうがそれが今のルークを蝕んでいるのは間違いない。人を幸せにしたいという気持ちもルーク自身が壊れてしまえば元も子もない。なんとかすべきなのだろうがガイではどうすることもできなかった。

「とに…かく、ここをさっさと抜けて、あの街から離れ…よう。」
「いや、もう少しここで休もう。大丈夫、そんなに早く気づかれないさ。」

ガイがそう言って笑うとルークはでも、と渋った。だがまた走ると言われれば無理な状況ではある。仕方ないといったようにルークはごめん、とガイに謝った。

「おいおい、謝ることはないんだぜ。別にルークが悪いんじゃ…」
「違う、俺が悪いんだ!俺のせいでガイにまで迷惑をかけてる!…俺のせいで!俺なんか…生まれてこなきゃ……」
「…おいルーク、いい加減に……」

ガイがルークの発言を咎めようとルークの言葉を遮った途端ルークの体は力を失ったように倒れた。突然のことにガイは動揺を隠しきれないようでルークの上半身を抱き上げて呼吸を確認する。
どうやら息はしているがこのままではルークが衰弱していくのは目に見えている。

「……どうしたら…!」

ガイがルークを抱き上げようとしたとき、少年の声がその場に響いた。

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