テイルズ短編 | ナノ



ノンアルコールでプラシーボ

「ルーク、僕が悪かった。本当にごめん!」
「ルーク〜ごめんな!出てきてくれよー!」

翌日ユーリがルークがいるであろう部屋に行こうと寄ってみればルークの親友であるクレスとロイドがドアの前でルークに呼び掛けていた。そして彼らは何故かルークに必死で謝っている。こんなに謝っているのだから許してやればいいものを、ルークは返事の一つもしないでただ二人が謝るだけの時間が暫く続いていた。
そしてその場を変えたのはユーリだった。

「お前ら、何でお坊っちゃんに謝ってんだ?」
「ユーリ?…あ!」
「ダメだって!それは今ルークには禁句だろ!」

ユーリに気付いたクレスがユーリの名を呼んだかと思うと彼はすぐに何かに気づき両手で口元を押さえた。そしてロイドがそれを咎めた。人の名を禁句にするとはどういう事かと二人に問いただそうかとすれば事情は後で説明するから、とクレスに背中を押されながらホールに出されてしまった。
ユーリは何故ルークが部屋に引きこもっているのかと考えたがクレスとロイドが謝っているのだから二人がルークが引きこもるようなことをしたのだと思考を停止した。だが何故か昨日ルークに殴られた右頬がもう腫れもひいたはずなのにじぃん、と熱くなった。

「…何だってんだよ、まぁどうせまたあのお坊っちゃんの我が儘の一つの延長だろ。」

そう割り切って甘いものを食べに行こうとユーリは食堂に歩き出した。

「ユーリ、ひどいよ。ルークを泣かせちゃうなんて!」
「はあ?!」

食堂に入ってコレットと目が合ってからの第一声がそれだった。瞬間食堂中の目という目がユーリに向けられた。ユーリは慌ててその場で否定し、コレットだけを食堂から連れ出した。確かに昨日ルークを泣かせはしたがあれはルークが酔っ払っていたせいだ。もしかするとその場を見られていたのか、とユーリは弁解しようとしたのだ。
食堂から出て説明しようとすると突然手を引かれて驚いていたコレットがユーリから手を放された途端両手を腰に当ててひどいよ、ともう一度言った。

「いや違う。あれはルークが…」
「ルークが頑張って告白したのに、ユーリはそれをいたずらだと思ったんでしょ?ひどいよ!」
「…は?」

論点が違う。ユーリはそう思った。大体あれはルークが酔っ払っていたから出た言葉であってそれこそ本当の告白でないであろう。そうユーリが言うとコレットは周りをキョロキョロと見て実はね、と内緒話でもするようにユーリに近付くよう指示した。

「ルークが昨日飲んだのはお酒だけど酔わないの。」
「はぁ?そりゃちょっと意味わかんねぇけど?」
「あのね、ルークが飲んだのはノンアルコールって言うのなんだって。ルークもそれを知らずに飲んだんだって。ロイドが言ってたよ。」
「……」

えっとなんて言うんだっけ、確かぷらしーぼこうか?とコレットが疑問符を浮かべながら言うがユーリには最早それは頭に入ってこなかった。コレットに悪い、と言うと早々にその場を立ち去り早歩きで目的の場所まで向かう。大した距離もなく一分とかからずたどり着いた先はルークの部屋前。そこでは先程と変わらずクレスとロイドの二人がルークに謝り続けていた。

「ごめん、まさか酔ってると思われるなんて想像してなかったんだよ。」

そのクレスの台詞でユーリは本当なんだと確信した。恐らく成り行きはユーリに告白したいと二人に相談したときが昨日の宴会の時だったのだろう。そこで二人がまだ未成年で酒の飲めないルークに少しだけなら気分が高揚してきっと言えるようになるよ、とノンアルコールの酒を進めたのだ。そしてそれを飲んで見事二人の術中にかかったルークがユーリに告白した。
ここまで考えてユーリは少しだけ赤面した。今ユーリが考えたものはあくまで予想だが間違えではないだろう。いつもは勝ち気なルークが自分のためにプライドまで捨てて人に相談しアルコールが入っていない酒でも信用して飲んで。アルコールのせいで赤くなっていると思ったそれは告白する恥ずかしさから。ユーリは純粋に可愛いと思った。
そして同時に言いようのない苛立ちが沸き上がった。自分は何故あんなにも一生懸命告白してくれたルークを酔っているから、と突き放してしまったのか。それがどんなにルークを傷つけてしまったか。ぎゅ、と拳を握りしめユーリは今度はゆっくり歩き出した。

「ルーク…あ!ユー…悪いけど、今は……」
「悪いが二人はちょっと席外してくれないか?」

いつものポーカーフェイスで言うと二人は顔を見合わせた。でも、と言ってきたロイドに頼む、と言うと二人は渋りながらも了承した。そして少し大きな声でルークに関を外すから、と言うと二人はルークの部屋のある廊下から立ち去った。

「さて、と。」

ユーリは腕を組んだ。

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