FF9other | ナノ



FF\11周年記念

「ダガー、」

そう呼ばれた女性は声のした方へ振り返った。女性―ダガーは声の主を見つけ、ニコリと笑った。元々その愛しい声をダガーが聞き間違える筈もないが、姿を見たことでもしも、という不安がふき飛んだ。

「ジタン、」

呼ぶと、ジタンはいつもの悪戯っ子のような笑顔を見せた。ダガーは年相応も無いと思いつつも、ジタンという人ならばとても素敵な笑顔に見え、自分を恥ずかしく思った。

「どうしたの?」

そんなことを思っていることなど、悟られたくないダガーはそう、ジタンに尋ねた。ジタンは当然、と言ったように持っていた花束をダガーに見せた。

「今日は、ビビが『止まって』からちょうど十一年だろ?」

先程までの悪戯っ子のような笑みはどこへいったのか、ジタンは寂しそうな笑顔をダガーに向けた。
まさにジタンの言っている通りビビが『止まって』から今日で十一年経った。それはあの世界を救う戦いからも十一年経ったと言うことでもある。失うものも沢山あったが、それほど悪いことばかりではなかった。実際、霧の大陸の三大巨大国のアレクサンドリア、リンドブルム、ブルメシアは以前以上の協力体制がついている。
そして、ジタンとダガーの二人は身分など関係なく、こうしてなんの隔てもなく話し、好きになり、今まででは考えられなかった身分違いの結婚までしたのだ。そこまで出来たのは全く楽な道ではなかったが。
それでも二人は今、幸せなのだ。

今日のアレクサンドリアはいまだリンドブルムには勝てないものの、蒸気の飛空艇技術を提供してもらい、漸く追い付いてきた。
今日はまた新しく製造した飛空艇を使い、ビビの墓がある黒魔道士の村に行こうという話しになったのだ。

「皆、懐かしいな……。」

ジタンは今から懐かしい面々を思い出しながら目を細めた。ダガーもその姿を見て先の戦いを思い出していた。
今更ながら王女という身分で戦いに参加できたのは凄いことをしたと思う。当時は家出をしたことをこの上なく悔やんだが今ではそれが良かったのではないかとも思う。

「そろそろ出発するわ。」
「ああ。」

船乗りに声をかけると、船乗りはハンドルをグイ、ときった。すると飛空艇全体がグラリと揺れた。そしてゆっくりと上昇しながら前進していく。
船乗りの話では二時間もあれば森の入り口には着くという。そこからは相変わらずというか、歩きだ。それさえも当時のことを思い出させる行為になる。

「ダガーは立派な女王になったよな。」
「国のことをほとんど私に押し付けておいて、よく言えますわ。」
「口調!」
「あ、」

ダガーはハッと口元を押さえた。実は皆でビビに『会いに』行くときは当時の口調、呼び方にしよう、という約束事をしたのだ。皆がビビの知らない内に変わってしまわないように。
特にダガーは今日限りの『ダガー』なのでつい『ガーネット』になってしまうこともあるので気を付けなければいけない。

そんなことを話していると二時間などあっという間で、もう目の前には深い森が広がっていた。他の者はもう来ているのかと話しつつ森に歩みを進める。
当時は霧があったこともあり、モンスターが出ていたが今となってはほとんど見ない。なので最近はリンドブルムの狩猟祭が厳しいなどとリンドブルムの王、シドが言っていたことも今の二人を吹き出させる原因だ。
あの頃は嫌になるほど出ていた、と言うと二人の笑い声が森に響いた。

「あ!ジタンだ!」
「ジタン!ガーネット姫も!」

記憶を辿りながら二手に別れた道をどんどん迷うことなく進むと、黒魔道士の村が見えた。入ってすぐ、ビビの子供達が迎えてくれた。
ダガーがガーネットではなくダガーだ、と言うと素直に大きな声で返事をした。
それから子供達はジタンとダガーを迎え入れるように手を引いた。

「皆来てるよ!」
「宿にいるよ!」

きゃいきゃいと楽しそうに言う子供達は本当に今日が親の命日だとわかっているのか、と問いたい程だ。
宿はジタンがダガーに故郷の話をしたところだ。ジタンは自分のことを第三者目線で話したのはジタンにとっても中々良い語り部だと自画自賛した。

「あ!ジタン、ダガー!」

昔より大分大人びた女の子の声が宿に響いた。その声で一斉にその場にいた者の目線がジタンとダガーに集まった。
一番に二人に気づいたエーコは当時六歳だったこともあり、あの頃と比べると一番成長が目に見える。身長もあれから成長したジタンの肩辺りにまで伸びている。

「ジタンもダガーも、久しぶりじゃの。」
「姫様、言われていた花を用意したであります!」
「相変わらず読めないやつだ。」
「料理なら沢山用意したアルよ!後で食べるアル!」

口々に二人に声をかける。
久々に揃った7人は去年の同日にもしたであろう、思いで話に花を咲かせていた。

プツリと突然話題が途切れると誰かがじゃあそろそろ、と言った。他の者は皆その意図がわかったようで腰をあげた。
それぞれ用意した花をビビや他の黒魔道士の墓に添えた。最後にビビの墓に花を置いたエーコは今にも泣き出しそうだった。

「エーコ、前にも言ったろ。一人前だって泣くときは泣くって。堪えなくたって、いいんだ。」
「うん、うんっ…うぅっ……」

17歳のエーコはあの時と変わらない、ビビもよく知っている六歳のような、泣き方だった。わぁわぁと子供のように泣くエーコを見てダガーも目頭が熱くなる思いだった。

墓から村の方へ戻るとビビの子供達が宿に飾りつけをしていた。テーブルにもテーブルクロスを敷いて、更にその上には先程クイナが言っていた数々の料理が乗っている。一番にそれを作ったクイナが椅子に座った。ジタン達はそれに吹き出しつつもそれぞれの椅子に腰かけた。
辺りは暗くなり始めた。

長い長い晩餐の始まり。

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