memo | ナノ



それでもまともなふりをする
2014/05/26 22:41

 鼻をつく塩っぽい臭いに気づいて目を覚ました。枕元の電灯で傍らに眠る関口を確かめると、寝間着の股間あたりが濡れていた。目尻に涙が滲んでいることから察するに怖い夢でも見て漏らしたらしい。魘されている様子はなかったが、その兆候を見逃した可能性は大いにあった。数十ヵ月ぶりに妻が不在のところに関口が泊まるというので、勝手を忘れて失態を晒している。そろそろ畳も換えなくてはなるまいな、と京極堂はため息を吐く。もう不惑にも近い年齢であり、自分の子供ならばまだしもまさか同年代の男の下半身の世話をするはめになるとは思ってもみなかった。しかも眠る直前まで恋人のように睦み合っていた相手である。将来への不安と焦りがない交ぜになったような複雑な気分だった。
 起こすべきか迷って、結局寝かせておくことにした。こんな状態で目を覚まされても面倒くさい。それに昨夜は、とふと回想して、睦んだ後で厠に行かせるのを忘れていたことに気付き思わず舌打ちした。明らかに自分の手落ちだった。寝間着と下着を纏めて脱がせ、起こさないように濡れた布団から移動させる。替えの下着を履かせながら何気なく萎えた性器を眺めた。思えばこれとも長い付き合いである。接し方はまあいろいろと変わったが、可愛らしく思う気持ちは変わりがないらしい。
 妙な感慨に耽るなとばかりに関口が目を覚ました。寒かったのかもしれぬ。ぎゅう、と京極堂の袖を握って「おしっこ、」と虚ろな表情で言う。未だ夢うつつだ。想定外の事態だが対応の仕方は心得ている。というより、手慣れている、だろうか。十何年のブランクはあれど然程難しいことではない。京極堂は関口の体を抱え、厠まで半ば引き摺るように連れて行く。便器の正面に立たせて履かせたばかりの下着を下ろし、ろくに力も入っていない自立しない体を片腕で支えながら、排出される尿が便器の中にしっかりと収まるようもう片方の手で陰茎を持ち上げる。不意にこの手を淫猥に動かして関口に射精させたい、という欲求に駆られた。そうすることができたなら――そういう類いの人でなしになってしまいたかったなと思いながらも京極堂は何もしなかった。関口ははにかんで俯いたまま、気持ち良さそうに尿道口からゆるゆると尿が溢れさせる。手元まで流れてきた尿も気にせずそれが出切ってしまうのを待ち、京極堂は関口の体を抱え直した。下履きを引き上げ寝室まで引きずっていく。自分の布団に関口を押し込み濡れた布団を引っ掴んで洗い場に運ぶ途中で、片手がまだ尿に湿っていることに気づいた。抱えている布団と同じ臭いがする。これは関口の臭いだ。そう思うと興奮した。先程の排尿する関口の恍惚とした表情を回想すると勃起を抑えられなかった。虚ろな目、だらしなく半開きの唇、恍惚とした表情――それらは性交中の――絶頂した表情を彷彿とさせる。絶頂を迎えた後の穏やかな快感に身を委ねているあの表情。私は床に膝をつき布団に鼻先を埋めて、関口の尿に濡れている手で無心に己の性器を擦った。吐精の瞬間。手の甲を伝い布団に染み込んでいく温度。荒く息をしながら京極堂は緩慢な動作で手にまとわりついた白濁を拭うと、気怠げな顔を繕いもせず後始末に取りかかった。


排尿がメインで書いてたはずがいろいろ暴走して気持ち悪いことになってしまった。許してください。



prev | next


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -