後半がちょっとえっちいよ






「…何を、」


 戸惑ったクラウドの声は聞こえなかったのか、彼は包み込むように両手で持ったクラウドの指先をやわくくちびるで食み、薄赤くぬめるその舌先を覗かせ、慰撫するように食んだそこを舐める。
 生々しくもどこか遠く、温度の高い粘液で濡れた肉の感触が肌を這う感覚を拾って、クラウドはほぼ無意識に彼の喉奥に指を押し込んだ。ぐ、と彼の喉が鳴る。
 くるしいだろう、はやくぬいてやらなければ。
 そう思う一方で、不埒な指先は薄くぼけた理性を凌駕して彼の口腔内を蹂躙する。


 彼が吐いてしまうかもしれない。
 この指が喉奥を突き破って彼を殺してしまうかもしれない。
 そんな危惧がクラウドの頭に過るが、崩れかけた理性を積み直すには圧倒的に時間も余裕も足りなかった。せめて、この薄暗く遮断された部屋に二人きりでなければ良かったものを。
 回らない思考は、衝動に溶けてしまいそうだ。それではいけない、と理性という名の最後の良心を必死にかき集め手放さないようにと抱きしめる。
けれど、クラウドの本能は、衝動は叫ぶ。彼は誰をも見なくても、誰かの夢を見、慈しみを受け、愛され、そしてその誰かに庇護と奉仕とを返すのだと。
 クラウドが知らぬその誰かは、クラウドに殺意によく似た、羨望と妬心とを抱かせた。
(俺たちは見てすらくれないのに、)
 人差し指と中指の二本で舌を挟み、擦り付けるように愛撫する。粘性のある液体が混ぜ合わされる、にちゃにちゃと卑猥な水音がする。彼の口端を、飲み込みきれなかった唾液がつう、と顎を滴り落ちていって、それをクラウドは舌で拭い取った。
 舌先で撫でた肌に感じる、不快な甘ったるさにはひどく辟易としたが、舌を嬲られ、空気を求めて喘ぐ彼を見ているとそれも良いかもしれない、と思った。


 ああ、毒されている。
 彼の鎖骨に噛り付いて歯型を残しつつ、妙に冷静な頭の端で思う。いつの間にか、彼の腔内を嬲っていた指先はシャツを潜り、彼の薄い腹を撫でていた。
 濡れてひやりとした感触が辛いのか、時折身体を捩る彼。クラウドは、露出した臍の脇に指を擦りつけて、緩慢に下腹へ手を降ろしていく。
 その間に、容赦なく噛み付いた鎖骨に滲む血液を口の中で転がして恍惚と飲み込む。そうして、彼が身体を捩っていたのは痛かったからかもしれない、と考え付いたが熱に浮かされた思考ではもうどうしようもなかった。
 彼の下履きの中に些か強引に手を突っ込み、彼を手の内におさめてそのまま擦り上げれば、結局は性に飢えた若い身体だ、火がつくのは早い。


「っ、…ぅ」


 それでも押し殺された呻きは、現実を見失ってなおも持つ彼の矜持か。彼の輪郭の溶けた瞳は快楽に更に潤み、色だけを鮮やかにしていくが、その瞳はクラウドを見ない。
 クラウドには感じ得ない誰か、を探してその視線はうつろっている。


「スコール、なぁ、スコール」


 呼びかけるもスコールの口からは荒く息が零れるだけ。視線は変わらず誰かを探している。クラウドは仕方なく鎖骨の噛み跡を癒すように舌を這わせながら、彼の先端をくじり、裏筋を擦り、スコールを追い上げていく。


「ひ、…っやだ、やだ、…さむい、っ、さむ、」


 高まる欲求に、ふるふると指通りのいい髪を揺らしてスコールは拒絶に首を振る。力無くクラウドの手首を掴み制止しようとしたが、クラウドにきゅうと自身を握り込まれて、手はその意味を成さなくなり、そのまま我慢しきれずに溢れた欲はクラウドの手を汚した。
 そのまま手に付いた白濁を舐め取り、クラウドは悦に眼を細め、スコールが惚けている隙に開かせた足の奥に掌を進めた。


「何も考えなくていいから、」


 そう、耳元で囁いて指を押し込めた。自分以外を求める思考など、それこそスコールが不慣れな快楽で止めてしまえばいい。







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