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遠くで、ふらふらと金色の尻尾が揺れる。それを追って、菫色も揺れる。偶然通り掛かり、それを見かけたスコールは呆れたように溜息をついた。
すると、バッツが振り返り、照れくさそうに頬をかいた。


「だってよ、気になんじゃんか」
「引っ張ってやるなよ」
「わーかってるって」


好奇心に負けたティーダに尻尾を引っ張られて、彼が珍しくも激怒していたさまは記憶に新しい。バッツは苦笑した。バッツのその辺りの距離のとり方は大人だからなのか、流石に上手だ。
それに助けられた覚えのあるスコールもそれ以上は何も言わない。
立ち去るという選択肢もあるはずだろうに、それきり、所在なさげに立ち尽くしているスコールを、バッツは腕を引っ張り座らせた。 
それから暫く、興味深く見ていた、金色の尻尾から興味が逸れたバッツはよく回る舌で、あれこれと豊富な話題を口に乗せた。よくもまぁ、そんなに話題が尽きないものだと、聞き役に徹していたスコールが思うくらいに。
そのスコールの背中に、不意打ちで軽い衝撃。


「なーに二人で楽しそうにしてんだよ」
「ちょーっと親交を深めてたんだよ」


正面のバッツの悪巧みをする子供のような笑顔に、嫌な予感を感じたスコールは、背中からジタンを振り落としてどこかに去ろうとした。
しかし、二人の方が早かった。振り落とされかけた体制を立て直したジタンに腰に絡みつかれ、バッツに肩を押され、三人で下草の上に縺れあって倒れ込む。
渋面を更に深くするスコールに対して、バッツ、ジタンの二人はくすくすと笑うばかり。
最終的には、スコールの咎める事を諦めた溜息が落ち、抜け出す事を諦める事を知っている二人は上機嫌だ。


「(…なんで、こいつらはこんなに機嫌が良いんだ…)」


そんな事は露知らず、スコールは深く深く息を吐いて、眉間の皺を揉み解した。それこそ、降伏の印となる事に気付かずに。
スコールの伏せた視界に入らないよう、バッツは鼻先を首筋に擦り付け、ジタンは腰のファーの方を向き、それぞれ笑みを深めた。








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