#twnovel



追記はボツverや補足などお見苦しいやつ。

「香水」「慈悲」「逃がす」

貴方。早くお逃げになって。貴方の生活に影を見出だしたくて堪らない人目から。何よりその影の一つになって人生に焼きついてしまいたい私の執着から。一吹き、香水を枕元に吹いて帰って。焼けるような胸を抱いてみる夢の中で、肌の匂いの混じらない虚しい香りが、焼野原を涼しく渡るように。#twnovel


嫌いなの、此方を向かず言うので、車窓に映る横顔を見た。膝上の弁当箱からウサギの林檎が覗く。「母親ごっこみたい」僕の好きな事々を君は疎む、卵型の爪、丸襟のブラウス、バレエで培った姿勢。育ちの良い彼氏。いい娘ごっこする君となら、糸で釣られたみたいにずっと恋人ごっこがしたいよ。#twnovel

追記

「妹いんだけど」翅に纏わる湿気に、よろけるように蛾が飛んでいた。何か腐る匂いばかりが強い、それにたかるものばかりが蠢く夏の夜に。「どっかで、お姫様みたいに暮らしてるって想像する」鱗粉に赤紫のネオンが煌めく。目玉模様に花畑のように映る。幸せだろうか。胡蝶の夢は、蛾にとって。#twnovel

追記

「刃物」「十分間」「映画」

10分。その長さがよくわからなくなったのはいつからだろう。俎上で際限なく等分されていく葱を見て思う。10分。1パート。静止画1000枚。通学させても世界を救ってもいい10分。「ずっと家にいるんだし」包丁を握る関節が白い。「飯くらい作っといてよ」1枚の画を差し挟むこともできない、10分。#twnovel


oblivious / Kalafina

叶わないことを知るために、出逢ったような人だった。共にある刹那を延ばしえぬことを、確かめるように触れていた。弦の切れる間際の絶唱を、抑えても風の繰る頁の一行を、無慈悲な神の指を離れ、銀の月に煌めきながら落ちていく、赤い糸の絡んだ一瞬を。「忘れるわ」永久に覚えるための物語。#twnovel


松笠の落ちる水音、ボートの底板の軋み、微かなそれらも静かな湖面に響くのに、向かいで動く唇の紡ぐ言葉が届かなかった。清澄で公正な冬の空気を渡れず散ってしまうように。「もう逢わない方がいいと思う」きっと忘れた頃に奥からとろりと耳を濡らす。生温く。不愉快に懐かしく。「君の為に」#twnovel

追記

それぞれのベッドに潜るいつもの夜のように、それじゃあ、とカプセルに入った。隣で目を閉じて、違う夢へと落ちていく。やっぱり私も、言おうとした唇が痺れたように動かなかった。滲んだ涙が眼球の表面で凍った。唐突に途切れ、百年後に始まる貴方のいない世界の全ては、この薄氷越しに見る。#twnovel

追記

アイスキューブのような第二資料室で、引く汗の揮発する蒸気さえ恥ずべきもののように感じた。立ち止まった貴方と手の甲が触れて、乱れる脈など言うまでもなく。白熊、海豹、海象、硝子玉の瞳の限りなく透明な視線に浸っている。等間隔に並ぶ、魂のないもの。適正な距離が計れない、あるもの。#twnovel

追記

「郷愁」「変化」「逃がす」

薄紫に霞むハルジオンの野原を、見つめるのが好きだった。目はやがて風と別にちらちら動く物を捉える。ぱっと包む手の中で、シジミ蝶が静かに翅を動かす――「ママ、ちょうちょいる」華やかな色に慣れた瞳はもう野原に何も見つけない。包む形の手を開いた。何か飛び去った手で、娘の衿を直した。#twnovel


バラに旬? 見頃? はないと思っていた。だってずっと花屋にあるから。カメラロールに夏の日付と曖昧な色の花が溢れる。「お前バラに詳しい?」「詳しい。赤、白、黄以外もある」我知らず漏らした息が液晶を曇らせ、色を余計にぼやけさせる。彼女の好きな花の名前を、あの夏に置きざりにする。#twnovel

追記

「桜」「優しさ」「脱力する」

張りつめた美しさ、というものがある。満開の桜のように、一ミリ動けば全て狂うようでありながら、瞬きの度睫毛に光の粒を増やすのが恐い程の。「もう恐くはないの」首を傾げる、葉桜の緑の葉漏日が肌の粗に降る。手折った花などこんなものだ。こんな風に果てなく愛しい。空しい。「よかった」#twnovel


「勝手」「透明」「飛びこむ」

君には私が見えないのでないかと思う時がある。長居して空のグラスを下げられてやっと、口にするファミレスのお冷みたいに。胸に埋められる後ろ頭に手を回した。現実を断つように君は水に顔を浸す。透明で安全で無害。例えばこの手を離さず溺れ殺すこともできると、君はどうやら思いもしない。#twnovel


「月」「カッター」「数式」

君の手のオルファに比べて随分月は白い。窓ガラスに映る蛍光灯くらい白い。「ごめん一人でやらせて」「カッターマットないしね」手からぱらぱら零れる紙片が白い。無味乾燥な( )や÷の並ぶ罫が白い。偶然委員に当たっただけの君と僕くらい白い、「明日の選挙で終わりだね」白いまま離れていく。#twnovel


「瞬く星」「靴」「嘲る」

ショウケースの中、星の名を冠すシリーズ、妖しく光る一足に囚われたように指した。試し履く足元で、赤いエナメルがシャンデリアを映しこむ。細いヒールに底上げされてなんとか踊らす側に回りたい私は、葬儀の日に赤い靴を求めた少女みたいに可笑しい。ミラ。私の踊るのは哀れな鯨の心臓の上。#twnovel


「郷愁」「体」「読む」

ワードを変えてもヒットしない書名に"舌打ち"をした。圧縮どころかスキャンもされていない、骨董級のブツの埃にフィルタが詰まる。指面樹脂の経年擦過と、パルプの繊維が具合よく――思った瞬間脳波が乱れる。紙を摘まむ初めての感触を、この指はなぜか恋しがる。幻肢痛じみた郷愁に甘く震える。#twnovel


「策士」「悪夢」「取りつくろう」

呻いて寝返りを打つ頭を撫でた。髪を耳にかけ、息を吹き込むように囁く。「どうしたの」「僕がいるよ」「僕だけが側にいる」細い声が糸のように君の神経に絡んで鎮めるのを想像する。君の夢の中に編み上げる。真綿の檻。救いの網。「わるい夢でもみた?」きっと僕より、わるくはないと思うよ。#twnovel


毎夏連日の夕立が去って、陰にした網から潮が濃く漂った。絡まる海草からぽたぽた滴が垂れ、唇に、なんか言いよ、と揺する腕に落ちて沁みた。「何も答えへんなら黙らしてよ」空を割るような霹靂にさえ慣れきった、俺達の世界を壊すものがない。槍か星でも降らないと、手を引いて殻を破れない。#twnovel

追記

「朝」「生命」「聞きたくない」

微睡の波が足を濡らす頃、雀が囀りだすので泣き喚きたくなる。あと3時間20分後にアラームが鳴り、4時間30分後には駅、50分後にはコンビニでどれも食べたくない昼食を選ぶ。自動的に計算を始める頭は短い眠りも許さなくて、始まろうとする朝の全ての音を止めたい。一番止めたいのは胸の。この。#twnovel


「薔薇」「慈悲」「目が潤む」

大層な墓は要らない、ただ一株薔薇を植えて。石を蔓で覆い、零るように咲く四季咲の薔薇。一つきりの願いと言って遺したものだから、私はそれを叶えなかった。大輪の豪奢な花束を置く。花を映す黒御影は、いつも涙を湛えるようだった黒い瞳に似ている。花など植えない。いつも私を待ってくれ。#twnovel


「勇気」「新月」「難易度」

月のない夜が晴れているか、人はどうして知るのだろう。柔らかなグレイの夜空が雲に閉ざされているのか、光らない月を浮かべているか、僕はどうして知るべきだろう。闇に溶ける背中を、声の届くかも、振り向くかもわからない背中を見ていた。身軽な気持ちだ。「待って」光のない恋はいっそ。#twnovel


「フラッシュバック」「Delete」「忍ぶ」

お、て、す、き、フリックで入力して、手が感電したように痺れた。さ行上、か行で左、夜中狂ったように打った動きを指が覚えていた。たった二文字のパスに記憶の蓋は開いて、手品の万国旗よろしく一繋がりの記憶が溢れる。手で顔を覆う。心が籠らないドットの文字、なんてひどい嘘だと思う。 #twnovel


膝上の花束にナトリウム灯が落ちる。赤紫の菊に流れるオレンジ。グロ。「渋滞抜けれそ?」不自然な間があって、同じことを考えたとすぐにわかって、ら抜きもうやめようと思った。勿論そんなの容易いことだった。どんな口を利いても、十日の菊で参っても、もうお叱りも頂けないのですね。先生。#twnovel

追記

「金星」「キャンディ」「猫なで声」

切子のキャンディポットの中で、飴が星みたいに煌めいて見えた。蓋をずらせばカンロ飴みたいに地味なそれが。槌目のシックなゴールドの光る指で、染めたばかりのハニーブロンドをくるくる絡める、「内から光るみたいだ」囁く声は胸に焦げつきそうに甘くて、スプーンでパリンと割れそうに脆い。#twnovel


紙袋から溢れるカサブランカに寄せる、横顔の無二のシルエットも花の一輪のようだった。複雑なカットの添う脚、鍵盤に滑らせた白い指、見慣れない一つ一つの部分が寄り集まれば君になるのが不思議だ――視線を上げ、雌蕊のように濡れた目と目を合わす。瞳の奥で開く白い花を、知らない、と思う。#twnovel

追記

「ナイフ」「パフェ」「幸せ」

幸福は思い通りには訪れない。ナイフとフォークを構えた瞬間に運ばれてくるパフェみたいに。今じゃなければどんなに、そう嘆きながらパフェを食べるのだ、きっと皆。夕立に駆け込んだファミレス、五分おきに腕時計を見る貴方に尋ねて苛立たせる。「2杯目頼んでいい?」実は今日誕生日だから。#twnovel


「和やか」「枝」「忍ぶ」

小鳥が枝から枝へ移る度、肌にレースのように、髪に花冠のように、花影が降った。花を震わすのを恐れるように、細い鈴の声で笑う。「のどかね」この腹の奥に秘めるものをぶつけたら、貴方は、「絵本みたい」立っていられずにその木に縋って泣き狂うような、「そうだね」酷いことがしたいのに。#twnovel


次に雨が降ったら、諦めようと決めていた。一滴墨汁を垂らした入道雲の底で遠雷が鳴る。フェンスを掴んで、湿気ていく空気を吸う。ぽつ、と久方ぶりの雨滴がコンクリを打つ。待ち兼ねたように早々と立つペトリコールが線香のようで、ポスターを剥がした。粗い写真に、さよなら、やっと言った。#twnovel

追記

機嫌良さそうだね、と言われて微笑み返した。思い当たることはいくつもある。これで最後と思って初めて、あなたの仕草の一つ一つが焼き付くこと。あなたに一番きれいに笑えること。「何かいいことでもあったの」ああ、バカな人、針の先程の憎しみもなく、完全な愛しさを以て、そう思えること。#twnovel

追記

「夜」「読書」「逃がす」

ナイトランプで読書をすると、胸で黒いものがもやもやと騒ぐ。愛され応援される主人公に、私より年下の作家に、耳をぴくつかせ尾を振る。ビロードの毛並みでするりと腕から逃れ、星降る町へ消えていく。ぱたんと本を閉じた。少し軽い胸に触れて眠った。ありがとう、朝にはお戻り、私の黒い猫。#twnovel


陽射しに既に炙られたようにくるりと反った、一枚の紙が貴方でないと断ずる論拠を持たなかった。震える手で刻み煙草を巻く。喫う。口中に満ちる煙が、唇に触れる滑らかさが貴方と信じることも、できなかった。貴方の香りも、唇で触れる感触も、知らないから、そう思って初めて少しだけ泣けた。#twnovel

追記

随分風の強い日だった。空の檻の寝藁が舞い、何とは指せない獣の匂いがする。妙に味のない飴をガリガリ砕く音が脳に響いて、記憶の堅い殻を叩く。外周の長い檻は直線に近い緩やかな弧を描いている、子供が私を指差す、私は何故、いつから、「氷を貰ってるよ!」檻の外にいると思ったのだろう。#twnovel

追記

帰したくない、煙草屋の庇に絡む夕顔のような薄い耳朶に、息を吹込むように囁く。ほっと桃色に染まるのが、紙風船を膨らますのに似ている。幼気に柔い肌をくちゃくちゃに丸めて飲んでしまいたいと思う。仄紅いものを胸に宿して、実のない約束も想わない名前も、甘く響かすことが出来るだろう。#twnovel

追記

「風」「月光」「我慢する」

瞬く睫毛の軌跡が月の光のように、揺れる髪の残り香は夜風のように、夜の窓の如く無防備に開いた心を訪うのだった。気紛れなさざ波の打ち寄すようにそれらが蘇る度、胸の奥でさらと砂のように何か削れる音がする。流木のように生白く、奇妙な形に成り果てた心がひとつ、この胸に収まっている。#twnovel


「買い物」「爪先」「癖」

癖なの。呟いて、爪の先で弄ぶようにマニキュアをつつく。虚ろな目に、コンビニの白々した蛍光灯が映る。今爪を彩る輝きより遥かに安価な、300円程のそれを買えない理由は勿論ない。「並べ直すのが?」僕は確かに何かを封じて、君は泣きそうに少し笑う。「そうなの。癖なの。きちんとするの」#twnovel


「金星」「変態」「ネックレス」

もうやめて、次の約束を遮る声が濡れていた。俯いて折った体、金鎖の滑る胸の谷間から光が漏れいずるように見えた。青い宵、明星の下、光が形を持ったような薄い硝子じみた翅が広がる。緑の脈が光る。もうやめて。その翅を千切って。何の望みもない世界に、この心を孵らせたりしないで。#twnovel


「眼光」「木陰」「狂う」

今できた盛り土の上で、砕けた蝉の羽が木漏れ日に煌めいた。鉄錆と水槽の藻を混ぜたような匂いがして、夏の木陰は死の気配が肌に添う。「命は」爪の土を見る君の目が、木陰に似つかわしくもない強さでぎらっと光る。「命でしか償えないよね」手向けた向日葵が映りこんで、日輪が瞳の中にある。#twnovel


白亜の邸と呼んで過言でない家、君の両親の渋面が過り、帰り道いつも君の顔を見られない。箸より重い物を持たない手を取っていいのか。滑らかに滋味溢れる物しか触れない唇を奪ってもいいのか。一緒に泥水を啜れと言えるのか。麗しの花月しか映さない瞳に、意気地無しの愚図が一人俯いている。#twnovel

追記

風に鳴る雨戸、肌に膜の張るような湿度、締まるこめかみで、テレビのない部屋にも台風の訪れは告げられる。猫がそわりと脛を撫で、天気図の雲のように灰白の体をくるりと丸める。エアメールの封を切ったペーパーナイフが皮膚を裂き、鉄の匂いがする。不穏に穏やかな、グレイの土曜日は過ぎる。#twnovel

追記

「ブルー」「視線」「慈しむ」

空間をぶち抜く水の柱に、銀の渦がざっと巻く。水玉の巨影が横切る。3階程上のフロアから見下ろす瞳と、目が合った気がした。瞳の中に銀の泡が映って、またそれが水槽のガラスに写り込んで、ミラーハウスのように増える煌めきを宿して、その目がふっと笑った。何もかもを赦すような目だった。#twnovel


「不幸」「麦茶」「はつこい」

ただ倦んでいただけなのだが、座敷の隅で石のように黙る私に貴方は甲斐甲斐しかった。ジュースもらう? どのお魚がいい? 俯いたまま上目で、麦茶のグラスと乾いた寿司の向こう、さっと一座を眺め渡した。次に死にそうな人を確かに探した。純粋に恋に狂ったあの目を、他人のように覚えている。#twnovel


君はメトロの乗換もできない。気鋭のバンドの一曲も知らない。乞われるまま空港まで来てしまう癖に、不貞腐れたように目も合わせない。伸ばした手にびくりと肩が揺れるのを鼻で笑って、温い唇にキスをする。この温さを縒り合わせた何かが、最終便に乗れないくらい縫い留めてくれたらよかった。#twnovel

追記

君の頬に映像が踊るので、その分スクリーンは欠けているはずだが、誰も気にしなかった。微笑んで唇にのせる三音ほどが、さよなら、またね、どんな重さの別れなのかわからないし、囃すのを聞けば愛の言葉なのかもしれないと思った。赤い車や黄色い落葉が幾つも頬に流れる。涙の代わりみたいに。#twnovel

追記

「秒針」「雨」「手元を見る」

どれだけ規則正しい音を厭っても、雨音と秒針からは逃れられない。目を覆い耳を塞いでも、掌で血流が鳴る、身の内で心臓が鳴る、こうも逃れ難い音の網から、どうして他愛なく君は抜け落ちてしまえたのか。鈍行の音に狼狽する僕を宥めて笑いながら、なぜそれに乗っていってしまったのだろうか。#twnovel


「私を」首の後ろに手を回し、スイッチを押し込んだ。「畏れていらっしゃるの」教えていない翳った眼差しのまま、目の膜が乾く。放熱が引き、香りが最後にふと立った。精巧に造り、温度を持たせ、香水を纏わせた君は一体何なのか。何を宿してしまったのか。罪の名の香水がしんと冷えて消える。#twnovel


そう告げて背を向ける姿を、覚えておかなければと思うと同時に風が吹いたのだ。灰の海、白い砂、黒い髪、目蓋の裏は巻き上がって目に飛び込んできた数多の粉々の星が真っ白く視界を絶つ光景で終わる。最後の台詞も風に紛れたから、ラストシーンを欠いた君との日は無声映画のように続いている。#twnovel

追記

「メール」「優しさ」「傷つく」

「尊敬、信頼しています。」いつも少しずれたドットの答えはなぞっても貴方の声で再生できない。昔小鳥のそれみたいにトクントクン音をたてていた心臓は、罅ひとつ入らずに真綿に包まれて、幾重にもそうされて、冬の朝鳥籠の底に身を横たえた鳥みたいに、知らないうちに息をしなくなっている。#twnovel


不謹慎きわまりないが、繁忙期と言うべきなのかもしれない。人を蒸し殺さんとする意思のようなものさえ感じる暑さでは無理もない。明日のお式への引き継ぎを無味乾燥な箇条書きに纏め、出た表は薄青く明け始めて、唇で割ったビターチョコレートは今日も沢山の人を葬った泥濘のような味がした。#twnovel

追記

「テレビ」「花弁」「はにかむ」

テレビ画面いっぱいに鮮やかな花が咲いて、その向こうに記憶にある顔を見て、箸の先から麺が落ちた。わたしアイドルになりたい、そう言う時いつもしていたはにかむ笑顔で、ハーバルリッチなんたら、とか僕にわからないことを言った。あの野原の淡い花も笑い方も、すぐに忘れてしまう気がした。#twnovel


「アメジスト」「言霊」「曇る」

鎖を手繰り、首にかかる守り石を唇の前に当てた。願わくは我等の天主、深い紫が吐息に曇る。浜辺の硝子のように淡くなってはすぐに戻る。「――」習いの通り唱える名ではなく、心に決めたただ一人の名前を唇にのせる。私の全ての罪の根元のような一人の名前に、手の中の石は紫焔めいて昏く光る。#twnovel


「白」「麦茶」「夜」

白いまま月の浮かぶ空を見て、夢だとすぐにわかった。夢、或いは何かの境。レモネードみたいな陽射しがふんだんに降って、喉の乾きを訴え、そんな洒落たものはないよと君は麦茶のコップを置く。「それ飲んだら帰りなね」耳元で泡のような音がする、遠くで呼ぶ声がする、君の笑顔が朧気になる。#twnovel


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