「……ん…ふぅ」




クチュ、ピチュ



薄暗く静かな部屋に響く水音。もう何分たっただろうか。




クチュチュ、ピチャ




「ぅ…ふぅ…」



とっくに限界なんだろう。エミは顔を真っ赤にさせ、苦しそうに涙を流す。…だが俺は更に舌をねじ込みエミの呼吸を奪う。




「――…っ!?ぅんん、ふっ…」



容赦なく口内を荒らす。どちらともつかない唾液がエミの口から溢れ落ちる。逃げる舌を追い、歯列をなぞる。




「――…!……!」



エミが声もなく限界を伝える。そろそろマズイだろうと解放してやる。




「――…はっ…ぁ」



俺の胸に力なく倒れ込み肩で息をする。顎を持ち上げ顔を上げさせれば、呼吸を荒げ涙を流し、トロンとした目で顔を真っ赤にしたエミが映る。口の端から溢れた唾液が何ともそそる。




「…リンド…」



掠れた声で俺の名を呼ぶエミに下半身が疼く。普段ならこの辺で優しく抱き締めて終わりにするのだが、今夜の俺はそれじゃ収まらない。




「…リ…ン――っ!?」



エミの言葉を待たず口を塞ぐ。頭を固定し舌を奥深くまでねじ込み、本能のまま獣のように貪りつく。




「――ん!…ん…うぅ」



エミは必死に俺から逃れようとする。だがそこは男と女。エミに逃れる術はない。俺は構わず口内を蹂躙する。




「―――…ふ、ぅ」




…エミは滅多にキスに応えない。人一倍恥ずかしがりなエミは舌を絡ませようとしても、よほど機嫌のいいときしか絡ませてはくれない。今もまた、俺が無理やりねじ込んでるだけだ。そんな状況も俺を駆り立てる。




ググッ…



エミの口を大きく開かせ舌を絡めとる。必死に逃げようとする舌を吸い上げると小さく悲鳴をあげる。




「    」



…限界のきたエミから口を離す。




「――…っはぁ!…んぅ!?」



息をしたのを確認すると、すぐさま口を塞いだ。




クチュ、クチュ




ピチャ、クチュ




「……はっ!…は、んぅ!!」




ピチュッ、パチュ





「…っは…ぁ――っ」



エミの呼吸の限界は知っている。何度も角度を変え舌を絡ませ、ギリギリで口を離してやる。塞いでは離し、離しては塞ぐ。ただでさえ息継ぎの下手なエミだ。シャレにならない苦しみだろう。




「――…はっ…」



俺はようやくエミを解放した。苦しそうに肩で息をする姿に心が痛む。だがそれ以上に獣じみた思考が脳を支配する。




「………リ」


「………舌」


「……え?」



エミは不思議そうに俺を見上げる。




「舌…絡ませてくれよ」


「――…っ!!」



俺は再びエミの顎をあげる。




「…や…も、無理――っ」



エミの返事を無視し、口付けを再開する。




ググッ チュッ、クチュ



エミの小さな口を限界まで開かせ、舌を絡ませる。




クチュ、チュ





ピチャ



しばらくするとエミが舌を伸ばしてきた。俺はすかさず絡めとる。一瞬後ずさったがそのまま絡ませ続ける。


…早く解放されたいのだろう。エミは必死に舌を絡ませる。こんなに積極的なエミはそうそう見られない。ここぞとばかりに堪能する。エミは泣きながら必死に俺に応えようとしていた…








*****




…長い長い口付けが終わり、エミが力なく倒れ込む。その目は涙を流しすぎて真っ赤に腫れていた。ようやく冷静さを取り戻した俺に罪悪感が襲う。




「…エミ」



俺がそっとエミの頬に手を伸ばす…




「――…っ!!」



エミが身体を震わせた。横から両手で顔を隠すようにし、小刻みに震えながら泣いていた。




「…ひ……くっ」



行き場のない手をさ迷わせ、一気に罪悪感に苛まれる。少々やり過ぎた。今さら気付いても遅いが。



「……ひ…ぅ」


「………エミ」


俺は出来るだけ優しい声で囁きエミを包み込む。…優しく、優しく髪を撫でる。落ち着いてきたところでまた顎をあげようとした。




「――…やぁ!!」



エミは俺を突き飛ばし拒絶した。そのままベッドの上から逃げようとするエミをあわてて捕まえる。




「や、だ!…も、したくな…」



泣きながら顔を背けるエミを抱き締め、耳元で囁いた。




「キス…嫌か?」


「…ひっ…だ…て、苦し…だも…」



エミの顔を両手で包み、顔を近付ける。




「…じゃあ、エミの好きなあまーいキスなら…いいか?」

「―――っ!!」






―――否定がないのは肯定の証。
俺はそっと触れるだけの口付けをエミに贈った…








優しくしたい、でも壊したい

「…(泣かせたいわけじゃないんだがな…)

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