「おい、落としたぞ」


「え?あ、ありが…ひっ!」


「あ゛?」


「い、いえ…ありがとうございます…」


タタタッ…


「…ちっ」



「…くそ!」


――…ったく。せっかく拾ってやったのに人の顔見て逃げ出してんじゃねーよ。あ゛ー…思い出したら腹立ってきた。そういや黄瀬の奴もこないだ…



「青峰っちって、ホント顔怖いっスよねー」


「ぁあ゛!?」


「ちょ…!青峰っち怒るとマジでやばいっス!人殺した後みたいっスよ!」


「黄瀬ぇ…テメー、死にたいみてーだな」


「いやだから青峰っちせっかくそれなりにイイ顔なのにもったいないって話っスよ!」


「じゃあなにか?テメーみたいにニコニコ誰にでも愛想振り撒けって?んでオレがそんな真似しなきゃなんねーんだよ」


「青峰っちも、笑顔のひとつくらい見せなきゃ女の子にモテないっスよ?女の子は笑顔に弱いんスから」


「なんで女にヘラヘラしなきゃなんねーんだ」


「青峰っちも前はフツーに笑ってたのに。今じゃ笑顔の欠片もないっスよね。そんなんじゃ、いつか絵美っちにも愛想尽かされるかもしれないっスよ?絵美っち、怖い顔苦手なんスから…」


「…黄瀬。テメー、オレにケンカ売ってんだな?」


「え!?ちょ、違っ!オレはただ青峰っちも黙ってればカッコいいんスから、もうちょっと笑顔も…って!ストップストップ!ちょ…!その机どうするつもり…ギャーーー!!」



「……」


…黄瀬、マジウゼーわ。思い出したら殺りたくなってきた。…よし、殺るか。どうせ教室にいんだろ。


「…あれ?青峰ー」


「あ?」


「どしたの?怖い顔して。人殺ってきましたって顔だったよ」


「……」


…ったく。どいつもこいつも。


「おい絵美。テメー今なんつった?」


「いひゃひゃひゃ…ら、らっへほんほほほほ…」


「何言ってっかわかんねーよ」


「いひゃいいひゃい」


「あーわかったわかった」


「うぅ…」


「オラ、さっさと教室戻んぞ」


「ふぇーい」


「……」



そんなんじゃ、いつか絵美っちにも愛想尽かされるかもしれないっスよ?



「…おい」


「へ?」


「…オレの顔、怖いか?」


「うん、怖い」


「テメー…少しは躊躇うとかねぇのかよ」


「えー…?だって青峰いっつも眉間にシワ寄ってて殺人オーラ出してんじゃん。バスケやってる時はイケメンなのに…」


「……」



絵美っち、怖い顔苦手なんスから…



「…おい、絵美」


「なに?」


「オレのこと…怖いか?」


「……」


「……」


「……怖くない」


「……」


…ギュッ


「怖くないよ」


「…ならいい」


あいかわらずちっせー手。…ま、コイツが怖くねぇってんならあとはどーでもいいわ。つーかやっぱ黄瀬殺す。








キミさえそばにいてくれるなら

「…そーいや教室に黄瀬いたか?」

「いるよ」

「(…よし)」

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