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「久々に来た忍術学園はやっぱり懐かしいな」

「兵助君ったら卒業してから一年も経ってないのに、なにおじさんみたいなこと言ってるの」

雇い主から今日一日だけ休暇をもらえたため、この機会に、と忍術学園に来た兵助君の後を追いながら少しからかいを滲ませた声音で言ってみる。すると兵助君は急に立ち止って振り返り、おれをしげしげと見つめる。……何だろう。

「そりゃ俺だって年取るさ」

「……え?」

言われた意味が分からず、首を傾げる。すると兵助君は急にぐいっとおれの緑色の忍装束を引っ張った。

「お前がこの色の装束を着る学年になったんだから」

そう言われてようやく合点がいく。

「そっか、兵助君はもう黒いのしか着ないもんね」

「そういうことだ。その色を着れるのはこの一年だけだからな。卒業したらこの先死ぬまで黒いやつしか着れない。プロになれたこととしては喜ぶべきことだが寂しいことでもあるな」

そっかぁ、と一つおれが相槌を打つと久々知君は再び正面を向いて歩き出した。遅れないように慌てておれも歩き出す。
再度目に映る彼の背中はやっぱり少し広くて。その背中を見つめながら、そういえば今日はやけに兵助君喋るなぁとか、この人本当におれより年下なの?とかなんとか思ったりもして。

「……大人になったってことなのかなぁ……」

「何か言ったか?」

「ん?いや、兵助君はおれより年下なのに老けてるなぁって」

「……そういうお前は最上級生になってもガキだな」

そう言って後ろを振り向きもせず、歩く姿に、あれ?と思った。
いつもならここでムキになって言い返してくるのが兵助君なのに。

「……大人になったんだね……」

と今度は兵助君に聞き取られないよう呟く。案の定、彼には聞こえなかったらしい。兵助君はずっと正面を向いたままだ。
その内に嬉しいんだか寂しいんだかよく分からない感情がごちゃまぜになっておれの胸を圧迫する。涙が出そうだったけれど六年生にもなったのに泣くなんてみっともない、と唇を噛んで耐えた。
そうしてまた彼の背中を見て、たった一年の差なのにどうして埋まってくれないんだろうねぇ兵助君、と問いかけてみた。



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