序章:事の始まりはいつだって唐突だ。-1  


ガラガラガラ。

長期旅行用の大きなトランクケース2台を押して、自宅のある12階建てのマンションのエレベータに乗り込む。
押すボタンは11F。このマンションの上部2フロアは私が占拠しているので、11のボタンがこのエレベータで行ける最上階。

ドアが開いたので荷物を引きずって降りる。玄関はすぐ目の前。

あぁ、重たい。
中身は殆どがガラスの器具やら金属製品やらだから仕方ないんだけどね・・・でも重いもんは重いのよね。
なんでこんなに沢山買っちゃったのかしら。
まったく、小規模の闇市なんていくもんじゃないわ。宅配使えないくせにアレもコレも買っちゃうんだから。
ま、あそこでしか受け取れない特注の弾丸使ってるんだからあきらめましょ。

ゴーロゴーロとトランクを転がして目指すは私の癒し空間、その名はリビング。

「あーつっかれた」

言葉にしたせいか、ソファに座ったせいか、一気に疲れが襲ってきた。
体がだるい。心持ち頭痛もしてきた。あ、やばい。すっごい眠たい。ちょっと転寝しようかしら。ベッドまで持ちそうにないわ。
よいしょっと横向きに置いたトランクに足を乗せる。お行儀悪くてごめんあそばせ。

「ふぁ・・・」

大あくびを一つこぼし、あとは睡魔に身を任せ、眠りの海へ身を委ねる。

・・・寝入る瞬間に誰かの声が聞こえて、引っ張られる感覚がする。


覚えのある感覚に、嫌な予感がした。



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