Q1:何で居たの A:ストライキ  


「ちょっと家出してくるわね。たぶん三日四日くらいで戻るから心配しないで大丈夫よ、いってきます」

なんて書置きを残して広島城を飛び出ちゃったのが、昨日のお昼あたり。

最近、また兄弟達の間で私に家督相続のスカウトを持ちかけるのが流行っているみたいなのよね。
私、政治方面は無理だし領主しながらお医者の仕事も教師の仕事もしてるのに。これ以上仕事増えたら倒れちゃうわよ。
いい加減鬱陶しいし、医学院の講義予定の空いた隙を狙って逃げてきちゃった。
政務?元綱ちゃんが代行してくれてるの。あの子だけよ、私に家督押し付けようとしないのは・・・。

お城飛び出したとしても、周辺に居たらあっという間に連れ戻されるのよね。
おかげで遠出しなきゃ息抜きも出来やしないじゃないの、もぅ。

避難先に選んだのは、ザビー城。だって、私以外ほとんど近寄らないんですもの。
今日の朝あたりに着くって一応早馬で文出したんだけど、届いてるかしら。
それにしても久しぶりだわ。相変わらず趣味悪い感じでかえって落ち着くわねー。
朝の清々しい空気もすっ飛ぶわ。
なんて思っていたら門のほうから一度見たら忘れられない城主様がゆったりのっそりと歩いてきた。

「元就サーン、久しブリねー!!レター見てびっくりしたヨー」
「Ciao、ザビー!!教主様自らお出迎えなんて嬉しいわ。いきなりごめんなさいね」

私に気づくなり、腕を広げて歓迎の意を示してくれる。
コイツが私を"サンデー"サンと呼ばないということは周りに誰も居ないということなので、遠慮なく素で喋る。
それはそうと、文は届いていたみたいだわね。早馬の人、(精神的に)大丈夫だったかしら?

「ノンノン、謝ることナイのヨー。フレンドが来てくれるのは、いつだって嬉しいのネー」
「ふふ、そう言ってくれると嬉しいわ」

ハグしたままバシバシとお互いの肩を叩き合うのって、あっちでは普通だったけど滅多にしなくなったわねぇ。
やってくれるのコイツぐらいだわ。
あ、これお土産。オリーブの塩漬けとピクルス。あとレモンとワイン各種ね。
トマトソースはこっちでも作りおきあるからいらないでしょ?

「遠くから疲れたでショ?お茶出すから中に入るネ。今日はミスター島津も来るって言ってたヨ」
「あら、じゃあワインもっと持ってきたほうが良かったかしら」
「たぶん大丈夫ヨー。アルコールは持参するって言ってたからネ。今日のランチ、期待しても良いデスかー?」
「えぇ、勿論よ。プランゾもチェーナも期待しておいて」

ちなみに。プランゾはランチ、チェーナはディナーのことですよ奥さん。
奥へ行く間に、そんな軽口を叩きながらも情報交換は忘れない。
ザビー曰く、本国からは未だに破門の通達は無いそうだ。・・・たぶん、私が(形だけとはいえ)ザビー教に入っているから。
狙いは石見の銀、それからひょっとしたら医療技術も。

「本国の教会、ますますガメツくなっちゃってるのね。嘆かわしいことヨ」
「まったくね。・・・まぁ、日ノ本もあまり強くは言えないわよね。本願寺とか本願寺とか本願寺とか主に本願寺のせいで」
「本願寺さんしか言ってナイよ、元就サン・・・」
「律儀なツッコミありがとう」

かちゃりと音を立ててテーブルに置かれたカップを見る。
ブランドも何もない、ただの白いカップからは紅茶ではなくほうじ茶の香りがした。
・・・紅茶、高いのかしら。うちは温室で自家栽培したコーヒーばっかりで、紅茶なんて飲まないからお値段わからないけど。
妙な違和感はありはするけど、お茶はお茶。うん、おいしいわね。

ところでさ

「ねぇ、さっきから気になってたんだけど、あの野菜・・・なに?」

現在座っているテラスから見える家庭菜園。
その一角に植わっているフェンネルみたいな、チンゲン菜みたいな・・・あの呪われそうな野菜はいったい何なのよ。



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うちのザビーはきれいなザビー(笑)



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