深い海の底に、沈没 | ナノ


 01








相も変わらず、続く日常の中で。

変わったものは、セラのドフラミンゴに対する呼び名。それと、ほんの少しの感情。














「よぉ、セラ」





『ドフラミンゴ。お元気そうですね』






セラがそう返すと、ドフラミンゴは可笑しそうに笑った。




「フッフッフ、やっぱりその呼び方の方がいいな」


『…そうですか』


私は呼びづらいのですが、とセラが付け加えると、ドフラミンゴは更に笑い声をあげた。











「お前が名前を呼び捨てで呼ぶ目上のやつなんて、おれだけだろう?」





『……ミホークは呼び捨てですね(…あと、スモーカーも、ですが。黙っていた方がよさそうですね)』







「…ミホークは親父代わりみてぇなもんだろう」

『…まぁ、そうですね。昔からお世話になっていますし』





セラがそう答えると、だろう?と言ってドフラミンゴは笑った。









「…セラ、お前も変わったなァ?」

『…そうですか?』




変わった、とドフラミンゴに言われて、セラは首を傾げた。



「あぁ、変わったさ。前までは、おれに関わりたくねぇとでもいうような態度だったが、今では違うだろう」



『…、そういう意味では、感情の変化はあるかもしれませんね』






いつもの真面目な表情のまま、セラは自己内省の結果を口にした。淡々とした話し方に、ドフラミンゴは少し笑った。



「そういうところは変わらねぇな」


『あまり極端に変わっていては、変化というよりも変貌でしょう』






ため息をつくようにそう返すと、セラは立ち上がった。




「セラ?」


『先程までお仕事だったのでしょう?コーヒーでもお淹れします』




ドフラミンゴはブラックでいいですか?とセラが尋ねた。その言葉にドフラミンゴが頷き返すと、分かりました、と言ってコーヒーを用意し始める。






「セラ。お前は今、仕事中だったんじゃねぇのか?」


『もちろんそうですが、一区切りつきましたし。せっかくドフラミンゴが来てくださったのですから、コーヒーくらいはお出ししますよ』





それほど時間がかかるものでもありませんし、とセラは言いながらコーヒーを淹れた。








『どうぞ』


「フッフッフ、悪いな」






ドフラミンゴはセラからコーヒーを受けとると、また笑った。




『どうかなさいましたか?』


「フッフッフ、いーや、何も?」










前は、こんなことしなかったのに。そう思うと、ドフラミンゴは可笑しくてたまらなかった。













(そのままおれに)
(染まってしまえばいい)

(おれだけが溺れるなんて)
(悔しいだろ?)








end.

2010/12/8
 



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