ポケ×マギ | ナノ




「なんだ、コノ生き物は」


ここはシンドリア王国。
その王であるシンドバッドの目の前には、茶色い毛玉のような生き物が眠っていた。


「さあ、なんすかね」
「なんすかね、ってマスルール。お前が連れてきたんだろう。」


シンドバッドは頬杖をつき苦笑する。確かにマスルールが連れてきたものだが、当の本人さえそれは知らない。


「なんか、見たことないのがいたんで」


そう、ただそれだけだ。
南国のシンドリア王国の自然を熟知しているのは、ある意味マスルールだ。
パパゴラスに認められる実力の持ち主であり、この国の生態系ピラミッドの中では頂点に君臨している(本人にはそんな気は毛頭ない)。
つまり、彼が知らない生物はもはやいないはずである。


「確かに、見たことない生き物ですね。ピスティなら知っているでしょうか」
「もう聞いてきました。知らなかったっすけど」


それは困ったと頭を悩ますジャーファル。この生物が、人間に害を及ぼさないとはいいきれないのでは、対処のしようがないからだ。


「なんかブイブイいってて…」
「ぶいぶい?」
「多分、鳴き声ではないですか?」
「ぶいぶい鳴く生き物なんて見たことないぞ、ジャーファル」
「シンさん、今いるっす」
「耳が長く、首と尾がふさふさしてますね」



端から見れば妙な光景である。
三人の成人男性が、一匹の生き物を囲み丸く集まっているのだ。
奇妙だと言わざる負えない。
しかし、三人はそんな気など毛頭なく、ただ目の前の生き物を観察していた。

茶色の短い毛。首のあたりはフワフワと綿のように柔らかそうで白っぽい。長い耳はピンッとたち、それに大きな尻尾。
とても愛らしい外見であった。


「な、なぁジャーファル」


ジャーファルはシンドバッドを見て、頬をひきつらせた。まるで、玩具を見つけた子供のように目を輝かせ、好奇心に満ち溢れていたからだ。
ジャーファルは知っている。
こんなシンを見たときは、禄な事がないことを。


「一応聞きますよ、なんですか?」
「少しだけ触っても「却下」何故だ、ジャーファル!!」


マスルールは触ったんだぞ!と子供のように文句を言う三十路。


「マスルールは不可抗力です。
それに、得体の知れない生き物を王に触らせる従者がどこにいますか!」
「しかしだな、今は眠っているんだぞ!」
「毒でも持ってたらどうするんです!!」



遂に二人はギャーギャーと、不毛な争いを繰り広げ始めた。
シンドバッドの好奇心は、今に始まったものではない。
この口喧嘩は、シンドバッドが仕事をサボったとき、又は危険な事をしようとする時に起こるが、あいかわらず改善されないようだ。

二人の声に、生き物の耳がピクリと反応した。
それに気づいたマスルールは、ソッと生き物を抱き上げた。
ジャーファルに怒られるかもしれないが、それは考えないことにする。



「………………ぃ?」
「……………」
「…………ブイッ!?」


「「ぶい?」」


生き物が目覚めたことで、二人の喧嘩は終わりを告げた。



おはよう


(ブイブイーっ!?)
(目、覚めたみたいっす)






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