こんにちは、ボクはイーブイ。
トキワの森の奥の奥に住んでいたイーブイで、8匹兄弟の末っ子なんだ。
ついさっきまで、リーフィア姉さんとブースター兄さんがじゃれあう声をBGMに、トキワの森で“かいきにっしょく”を見ていたのに、なんでこんなジャングルにいるんだろう。
周りを見回しても、見たことない植物や動物ばかりで、ポケモンらしきものはいない。
一緒にいた兄さん達も消えてしまった。
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数分前。
「あっはは〜!こっちよブースター。相変わらずノロマねぇ」
「うっさい!リーフィアまちやがれ!」
嫌よ〜Wwなんて、尻尾を振りながらリーフィア姉さんは言う。
もう、相変わらず仲悪いなぁ。
いや、喧嘩するほど仲がいい、かな?
「こらっ、はしたないぞリーフィア。美しくない」
「グレイシア兄さんは相変わらずね。美の追求なんて」
冷静なグレイシア兄さんにシャワーズ姉さん。
この二人はクールでかっこいい。ボクも、こんな大人になりたい。決して、ブースター兄さん達みたいにはならないぞ!
「どうでもいいじゃん、そんなことはさぁ〜。それより、ブラッキーご飯食べた〜い」
「もう、サンダースは食いしん坊ね。まだ早いわよ」
「エーフィの言う通りだ」
「けち〜」
バトル以外のんびりやのサンダース兄さん。いっつも優しいエーフィ姉さん。寡黙なブラッキー兄さん。
流石に安定してるね。ブレがないや。
こんな日常を壊したのは、あの黒い太陽だ。
「エーフィ姉さん、今日森のみんなが言ってたんだ。
今日は黒い太陽が、太陽を食べちゃう日なんだって!」
ボクが、エーフィ姉さんに飛びつきいえば、エーフィ姉さんはフフッと笑った。
「マジで〜?太陽って食べれたの〜」
「サンダースまで……、今日は皆既日食よ。月が太陽と重なって、黒い太陽に見えるの」
「な〜んだ。太陽食べれないのか〜」
つまんなーいの〜、というとサンダース兄さんは、丸くなって寝息をたて始めた。
かいきにっしょくって言うのか、面白そうだ。
「姉さん、いつ太陽が真っ黒になるの?」
エーフィ姉さんは、少し悩むそぶりをし、もう少しよ。と言って笑った。
なるほどね。もう少しなら、木の実でも食べていよう。
ホウエンからピジョットが持って帰ってきたモモンの実が、植えたものがもう実っている筈だ。
ボクは、モモンの実を運んだ。
いつものようにピジョットに手伝って貰った。
皆さんご存知の、ポケモンマスターを目指す少年のピジョットだ。
「ありがとう、ピジョット」
「いや、これぐらいならお安いご用だよ」
そう言って飛び去っていった。
僕と彼はもう相棒的仲で、毎日一緒に散歩をする。
高い所は大好きだ。
みんなのもとに戻れば、ブラッキー兄さんやエーフィ姉さんは、空を見上げていた。
「そろそろかしらね、ブラッキー」
「だな」
二人は僕の存在に気づくと、エーフィ姉さんが手招きした。
「イーブイ、もうすぐよ。
こちらにきて、一緒に食べましょう」
僕はモモンの実を引っ張って行き、空を見上げた。
段々と黒い円が太陽に近づいて、白い太陽を少しずつ、喰らうような覆い隠していく。
完全に太陽がのまれた。
そう、ここだよ、ここ!
かいきにっしょくになって、気づいたら……。
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「ここについてたんだよね」
兄さーん、姉さーん。
心細いよー、ボクを一人にしないでおくれよ。
ぼっちなう。
(くぅぅうう)
(モモンの実、食べたい)