あめ玉 | ナノ

あめ玉


「ということで、ハッピーハロウィン!!」

ライムとリオウと合流して格技場へ向かうと、白い布を被ったアヤと黒いマントと牙をつけたユイカが叫んでいた。
アヤはオバケでユイカは吸血鬼だろう。

そういえばハロウィンだったな、

と自分の右手にかかる重みを忘れて考えていると女子の更衣室からぞろぞろと後輩も猫耳やらなんやらつけながら出てきた。

(可愛いは正義。)

「ほんま大丈夫なん?これ」

アビに聞かれたがぬかりは無い。

「高野先生(顧問)から許可もらったもんねー」

と答えるユイカ。しかも先生ノリノリで、OK出してたよね。泉先生(副顧問)なんて「なら、お菓子もっていくか」って笑顔で言ってたからね。
高野先生、普段眉間に皺寄ってるけどたまに茶目っ気あるよなぁ。


・・*・・*・・*・・


ということで、オレ達も更衣室に入って着替えてきた。
ライムは猫耳、尻尾、首に鈴の付いたリボン。
リオウは魔女っ娘。
オレは犬耳に尻尾に首輪。
最初は仮装する気無かったんだけどつけられた。

が、しかし皆下は道着と袴である。流石剣道部。

「普段の光景に滲み出る違和感www」
「言うなっそれ思ってたけどっwww」

ライムさんと爆笑しながら、皆そろってきたところで声をかけた。

「ほら、菓子配るから並べー」
「私も配るよー」

菓子担当はオレ達の代が14人中5人。
後輩も8人中3人作ってきてくれた(もちろん女子の)。因みにオレは数作れるクッキーにしときました。

「トリックオアトリート!です!先輩」
「寧ろオレがトリックしたいw」

またまたーとか言われながら一人一人菓子を渡していった。

粗方配り終えたあたりで隣で一緒に配っていたマナが突然呟く。

「そーちゃん…その首輪エロいよね」
「(´・ω・`)?」
「顔文字やめんしゃい。可愛いけども」

リオウにつっこまれながらマナに詳しく聞くと、

「いやぁ、そーちゃんってどっちかって言うと孤高の狼って感じだからさ。首輪つけると誰かの所有物って感じがして…………エロい」
「何今の間」
「しかもちょっと擦れて赤くなってるせいか更にエロい。髪と肌が白いせいで首輪の黒さが引き立ってエロい」
「エロいエロい言い過ぎやろ」

笑いながらツッコミをかますと

「どっかに包容系ドSな攻め落ちて無いかなぁ」
「マナさん、それホモ故に使える表現。オレ、バイだけど男じゃないよ?」
「え?そーちゃん男じゃないの?」
「あ、オレの衝撃的な告白はスルーなんですね。しかも女としての性を否定されたんだけどどうしたらいい?」

ライムとリオウに助けを求めると

「え?男として生きればいいんじゃない?」

打ち合わせしてたの?してたんでしょう?ってぐらいハモって言われた。
更に追い打ちをかけるようにアヤとユイカが

「だって、虫と戦えて、料理できて、頭そこそこ良くて」
「運動もそこそこできて、イケボで、性格イケメンで」
「寧ろ何で男として生まれなかったの?そーちゃん。あ、このケーキ美味しい」

最後にトモエさんにトドメをさされた。
オレのライフはもう0だよ。

結果的にわかったこと。
マナさんは腐った世界のお方である。



・・*・・*・・*・・



4時からスタートしたハロウィンパーティーは30分後には終了。
すぐに切り替え、いつもの光景に戻っていた。

「姿勢正して、礼!」
「お願いします!」

この切り替えの早さは剣道部の良さだよなぁ、と思いながら準備運動と素振りを終わらせ、防具をつける。重くなった身体を持ち上げ、ペアを組み、皆並び終わったあたりで

「切り返しー!!」
「はい!!」

ユイカの声に皆で返事を返す。



お互いに礼をし、竹刀を構え、思い切り空気を吸い込み、

「やぁぁぁぁっ!」

打ち込まれた音の後、竹刀同士がぶつかり合う音とそれぞれの声が響いていた。



・・*・・*・・*・・



「ハロウィン…か」
「どしたの?ソラちゃん。
……あぁ、ハロウィンかぁ。そろそろだねぇ」

近所の家に飾られていたジャック・オ・ランタンを見て昔のことを思い出していると、隣の赤髪が話しかけてきた。

「ハロウィンということでっ」

いきなり腕を引っ張られ男の方を振り向くと、口に何か放り込まれた。

丸くて甘い……

「あめ玉?」
「うん、さっきクラスの女子にもらった」

口の中でコロコロ転がすと広がる甘味。

(……まるで、思い出みたい)

舐めている時は甘くて幸せになれるのに、舐め終わってしまえば残るのは空虚感と微妙な後味。

それでもあめ玉を舐めることをやめないのと同じように思い出を作ることはやめない。

(馬鹿馬鹿しいけど、それがあるから人間でいられるんだろう)

オレは小さくなったあめ玉をかみ砕いた。






fin.





アトガキ
ハッピーハロウィン!!

ということで番外編です。
最後の赤髪誰だよってツッコミは無しの方向で…。
将来的に使いたいキャラです。

最後の方なぜか剣道部の放課後練な光景に…。どういうことだ…?
でも一応本当に私の学校の剣道部はこんな感じでした。そりゃマジでハロウィンパーティーなんてやったら生徒指導室行きだったでしょうけど。

バレンタインでお菓子もって行った人を全員呼び出しからの担任と個人面談するような学校ですからね。トイレに飴の袋あっただけで学年集会っていうのもあったな…。(遠い目)

その分平和ではありましたね。懐かしや。

今回はこの辺で。

でわでわ



[ back to main ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -