また明日も次の日も
ぼーっと水面を眺めていた視線を上げればこの辺りの野生のポケモン達が水遊びや休憩をしに現れていたことに気付いた。
ヌオーとウーパーは近くの水たまりで遊んでいるし、ジグザグマにマッスグマは水を飲みに来ている。
その光景に頬を緩ませると、水の中で遊ばせていた足を少し強めの力で突かれた。
「楽しい?ミロ」
声を掛ければ水面から顔を出し、美しい声で返事をするミロカロス。
その美しい見た目と、ホウエンのジムリーダーであり、コンテストマスターであるミクリさんの影響か、コンテストに出るばかりで、あまり戦闘を好まなさそうなイメージがあるが、うちのミロカロスは私に似て戦闘狂だ。
ほら、今もまた水飛沫をあげながら水の中の他のポケモンとバトっている。
(いつもすまんな…)
思わず心の中で合掌する。
再び満足気な顔で帰ってきた当の本人。
「あんまりいじめすぎちゃだめよ?」
苦笑しながら言うと分かっているのかいないのか、大変元気な返事が返ってきた。
こいつと私の出会いは、私が10歳でこいつがまだヒンバスだった頃だった。
釣り好きの父がいきなり「なんか釣れた」と言って私にボールを投げてよこしたのである。
そのあと桶に水を張って出すと、何を考えているのかわからない表情で、お世辞にも綺麗とは言えないポケモンが、私を見つめていた。
今考えると娘の最初のポケモンに何の説明も寄こさず、ヒンバスを与える父親もどうかと思うが…。
当時の私はもちろん固まった。
しかし、普通の子供なら即刻返しに行くところを私はそのまま育てることにした。
なんと言うか、あの一瞬で愛着が湧いてしまったようなのだ。
母親の最初のポケモンがコイル、父はゴース、という所を考えると普通と違うポケモンを最初のポケモンに選んでしまうのは遺伝なのかもしれない。
(まぁ、進化するとやたら強くなる、という点では良いチョイスなのだが)
それから旅にでてしばらくしてからヒンバスは進化。(もちろん調べた)
今はもう旅も終えて、ここの近くの町に住んでいる。
日が傾きだし、少しづつ空が赤く染まり出した。
足を水から出してタオルで拭いてミロカロスに声をかける。
「ミロ、帰ろ」
のそのそと湖から這い出てくるミロカロスについ笑うと、不機嫌そうな顔をされた。
「ごめんごめん」
撫でながら謝れば機嫌を直してくれたようだ。
我が相棒ながら単純である。
夕陽で赤く染まる森をゆっくり1人と1匹で移動する。
また明日も次の日も、君と一緒にいられたら良い。
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