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お願いサンタ

「キズナさん、もうすぐクリスマスなんですけど、なんかやらないんですか?」
 部屋にいるのは、女性と青年。青年のこの言葉に、
「ん、正式なプレゼント配りは本家の人たちがやってくれるから問題ないよ?」
 というより、私にそういう仕事回ってこないんだよね。一応協会には登録してあるはずなんだけどなあ。とサンタを名乗る女性、キズナは笑う。
「でもね、サンタのお仕事自体は入ってるんだけどね」
 手伝ってくれるんだよね、とばかりに目を輝かせているが、青年のほうは受ける気は全くなさそうだ。
「サンタの手伝いとか、碌なものじゃないでしょう」
 面倒なことに俺を巻き込まないでください。サンタの知り合い他にいるでしょう。と、言い返す。
 キズナの方は、そんなに怯えなくてもいいのに。といった後こう続ける。
「サンタが何人もいなくてもいいんだって、必要なのはトナカイの方なんだよ。だから、ユーマ手伝ってよ!」
 青年――ユーマは、困ったような顔をしてキズナを見る。結局彼女は何をしたいのか、ユーマには図りかねていた。
「幼稚園とかに行くのに、サンタだけじゃ締まらないと思うんだよね、私としては」
 だから、手伝ってよ! と、キズナは一歩近づくが、ユーマはそれに反応し一歩下がる。こういうものには、嫌な予感しかしていなかった。
「あれですよ、サンタ仲間いるならトナカイの知り合いだっているんじゃないですか?」
 ある種、これはユーマの秘策だった。これが外れたら、諦めて手伝おう、そう心に決めた一言だった。
「あー、えっと、いるには、いるんだけどね……」
 なんでもはっきりと、明るく言うキズナには珍しく歯切れが悪い、ユーマはこれはチャンスだと思った。
「なら、その人使えばいいじゃないですか」
 俺だって、忙しいんです。という言葉は飲み込んだ。仲間内での料理分担はほとんどユーマが負っていることくらい、キズナにも分かっているだろうから。
「そうしたいのは、やまやまなんだけどね。まずどこにいるか定かじゃないし」
 それに、あの人達私以上に普通じゃないからねー。という言葉にユーマは思わず、普通じゃない自覚があったんですかと言いかけ慌てて口を閉じる。
「一応、一般の人にない〈フシギ〉を身につけていることは自覚してるよ。でも、使っていなければ至って普通の人に見えると思うんだ。でも、彼らは違うんだよね」
「どんなところが?」
 ユーマはキズナをして、人とは違うという〈トナカイ〉たちがなんだか気になった。
「片方は見るからに変だと思われるだろうなー。赤い髪に赤い目服装は甚平だからね。それに、口調とかもかな」
 彼は機械も苦手だから、タイミングよくなきゃ全然会えないんだよね。
「もう一人は可愛い女の子だよ」
 そういって、キズナはユーマをチラチラとみるものの、ユーマは表情を変えない。
「面白くないなー。それで、その子は地面に足ついていると、とてつもなくダメなんだよね」
「ダメ? ドジっ子とかじゃなくて?」
 うん、そんな言葉じゃぬるいとばかりに首を振る。
「あの子には地面を歩かせちゃいけない」
 真剣な顔でキズナは語る。動物に気づかれそうになったり、見られてはいけない大人たちに見つかりそうになったり、それはそれは恨みがましく語るものだから、さすがのユーマも可哀想になった。
「でも、それキズナさんが体験したわけじゃないんですよね?」
「そうだけど、でもあの子は歩かせちゃいけない」
 だから、幼稚園にはいけないの、OK?
 嫌に、発音良く言うものだから、ユーマも無意識に頷いていた。
「だから、人がいなくって困ってるんだ。だから、手伝ってくれるよね」
 無意識に頷いていたユーマは、あれという思いに駆られたが、いつものことだしまあいいか。とあきらめた。
「それで、何をするんですか?」
 ユーマが断ればよかったと思うのは、これから何秒後だろうか。


2013/12/24



 メリークリスマス!







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