運命の糸を紡いで
僕…もとい私が本当の事を聞いたのは、私が12歳になる日だった。あの事実は私には重すぎたのだ。当時私は吉良家の人間として 吉良 アキト として育てられた。しかし…
「と…父様…それは…」
「本当だ、お前は…お前の本当の名は 基山 アキト だ」
「き…基山…父様っ…僕は…」
「お前の考えはあっている、お前は基山家の人間、ヒロトの実の妹だ」
「ヒロト兄さんと…本当の…兄妹…」
「父さんっ!?」
ヒロト兄さんがばたばたと廊下を走り、荒い息をたてて勢いよく部屋に転がり込んできた、額にはうっすらと汗が浮かぶ。
「なっ…話して…っ」
「ひ……ヒロト…本当なのか?」
「…っ…ああ」
「私は、お前たちがこの‘お日さま園’に入ってきたときに、片方を引き取らせて欲しいといっている人の話を聞いた。しかし、幼い頃から兄弟が別れるというのは良い話ではない事を…私は自分自身の経験から知っていた…なぁ…瞳子」
横でずっと黙っていた瞳子姉さんが顔を背け、俯いた。微かに肩が震えている。
「ヒロトにも1年前…12歳の誕生日に全てを話した。ヒロトはずっと…黙っていてくれたようだな」
「はい、ですが―」
「お前は本当の事を話す事に反対してな、アキトを想い…」
「父さん…」
「だが、たとえ荷が重くとも、このことを話して置かねば―」
「父さんっ」
「今回のエイリア石計画は…」
「父さんっ!!」
「成功…しないのだ」
「もうやめてくださいっ!!」
ヒロト兄さんがすっと立ち上がる。
「オレを利用するのはいいです!オレは貴方のために尽くすと誓いましたから。ですが」
ヒロト兄さんは私の方に近付き、私をかばうようにして父様の前に跪づいた。横から覗く瞳は私と同じ−緑
「アキトを…オレの大切な妹を利用するのであれば…いくら父さんでも許しませんから…」
「だまれっ…黙るのだ!!」
父様は声を荒げ、ヒロト兄さんの頬を力任せに叩いた、ヒロト兄さんの体が少し後ろに飛んだ。
「―っ!?」
「ひっ…ヒロト…父様…あっ」
「アキト、今日からお前は二つの名を持つことになる。もう一つの名は ノラン だ」
「の…ラン…」
「これからエイリア学園の奴らの元へ連れていく、瞳子、グランを連れて参れ」
「はい…ヒロト、立てる?」
「ああ…行かないと…」
「…ヒロト」
「おっ新入りか」
「ふっ…どんな奴でもいいさ」
私は父様の後ろを黙ってついて歩いた、聞き覚えのある声が暗闇の中に響くと、突然赤と青のスポットライトが着き、不思議な機械から誰かが降りてきた。
「紹介する、今日からエイリア学園の仲間になる ノラン だ」
「なにっ!?お前…」
「…っ!?」
さっき降りてきた二人は晴矢兄さんと風介兄さんだということを今知った。二人とも、宇宙服のような衣装に身を包んでいる。
「…よろしくお願いします ノラン と申します」
「なっ違うだろ!何がノランだ!こんなとこにくるんじゃねーよ!」
「君は此処に来るような人間じゃない、大切な物を失う事になるんだぞ!?」
「全て承知の上です」
「なっ!」
「あっ…グラン…」
「やあ、お待たせ…皆揃ったみたいだね」
ヒロト兄さんも宇宙服みたいな服を着て、白いスポットライトを纏っていた。
「グランも何言ってんだよ!?アキトはお前のいも―」
「なんだ、皆、知ってたんだ…私だけっ…ヒロトも、風介も、晴矢も、父様も姉さんも、もちろんリュウジと玲奈も知ってたんでしょう?」
「…そうだよ」
ヒロト兄さんが答えた。私は不適に微笑んだ。
「ノラン、彼等はお前の仲間だ。お前の知ってる彼等ではなく、もう一つの名の彼等なんだ」
「もう一つの…兄さん達…」
「グラン、ガゼル、バーンという、治はデザーム、リュウジはレーゼ、玲奈はウルビダという名だ」
レーぜ…うる…」
「ノランよ、私はお前にランクをやらねばならない。エイリア学園では、そういう決まりなのだ」
「らん…ク」
「お前には‘マスターランク’の称号を授ける」
「まっ…マスターだと!?」
「オレたちと同じ…」
「なぜだッ…なぜなのですか!?」
「この子には素質がある。あの技を見みてみろ、ノラン、やりなさい」
「はい…」
私は、父様からボールを預かり上に蹴り上げた。一つ息をつき、そして…
「アクアリングスライダーっ!!」
水流が私の周りを囲む。それは滝のように激しく流れ、ボールはどこかへ吹っ飛んで行った。
「…すげ」
「これからは、この四人でマスターだ。ノランのチームは…アクアリウムとしよう。ノラン、お前にこれをあげよう、誕生日のプレゼントだ」
そう言われて貰ったのが悲劇の石、エイリア石のペンダントだった。
〜〜〜〜〜
それから一年、私達は特訓に励んだ。瞳子姉さんは最強(?)の雷門中の監督になって、スパイをしているらしい。
「はぁ…っ」
「ノラン、疲れたか?」
バーンが声をかけてきた
「まだ行ける、やらしてくれ」
「無理すんなよっ!ほい、飲み物!」
「あっ……ありがと…」
バーンは少し、ニカッと笑った
「後半、始めるぞーッ!」
私はチームの皆に向かって叫び、プロミネンスとの試合に集中する。
今日も必殺技はいいカンジだ。
廊下でグランに会った
「あっ―…」
「ノラン…」
反応に迷っているとグランが、
「ノラ…アキト、今日、夜に会えないか?オレの部屋で待ってる」
「…」
夜、ウルビダがさりげなく何処に行くのか聞いてきた。
「何でもないの、ちょっとグラ…ヒロトの部屋に、遊びに行くだけ」
「大丈夫か?グランとはあんなッ…実の兄妹だった事、私達だけが知ってた事、辛かったんだろう?…それに漬け込まれた事も相当辛い事なのに―」
「昔の事を掘り出すのはやめて!―ちょっと行ってくるだけだから」
「ノラン…」
ヒロト兄さんの部屋の前には大きな星の飾りが付いている。私があげた物だった。
「兄さん?入るよ?」
「どうぞ」
兄さんはベッドに座り、コーヒーをすすっていた。
「来てくれないかと思った」
くすっと笑いながら兄さんが言った。
「僕だって、約束は守るよ」
「アキトは、そういうとこが優しいよね、昔から…」
「…ヒロト兄さんは昔から、しっかりしているように見えてどっか抜けてて、天然で優しくて、でも意地悪だった!」
「ふふっ酷いなぁ」
「褒めも入ってるってば」
しばらく談笑を続けていると、不意に兄さんが立ち上がった。
「さて、始めようか」
「何を?」
「あっ…と、はいココア」
「えっ、覚えててくれたんだ」
「何が?」
今度は兄さんが聞いてくる。
「僕がコーヒー飲めないってこと」
私はコーヒーを飲むと、夜に必ず恐い夢を見る、だからコーヒーが飲めなかった。代わりに、ココアは大好きで、いつも飲んでいた。
「大好きな妹の事を忘れたりしないよ」
「…うん」
「さ、ベランダへ出てくれるかい?」
「あ、分かった…星を見るんでしょ?」
「ご名答」
「わぁ…キレイ…」
「観察始めるか」
「ヒロト兄さんは毎日此処で、星を見てたの?」
「うん…ずっとね」
少しココアをすする、何だか苦かった。
「あれは大三角、あれはこと座、あっちは―」
「まだ覚えてたんだ」
「たまに見てたからね」
「寒くない?」
「兄さんがいるから平気」
私たちは寄り添いあって星を見た。
「…僕、兄さんの事嫌いじゃないよ?」
「はっ?」
びっくりしたように兄さんが声を上げた。
「…大好き」
「…ありがとう」
優しいその声を聞きながら僕は眠りに着いた
恐い夢を見た、12歳の誕生日の
「うあっ…っく…ひっ…く」
「アキト!?」
「兄さっ…ん、ひ…ロ…お兄ちゃんっ…!!」
「アキト!あき…」
「んっ…」
「よかった、水いる?」
「うん…あれ?僕…」
「星見てそのまま寝たから、オレの部屋に寝かせたんだ、うなされてたけど…どうしたの?」
「誕生日の夢を見たんだ…」
「…そっか」
「恐かった…こわかっ…たんだ…父様がッ…あんな…」
身体を震わせ涙声になっている私の背中を、兄さんはゆっくりと撫でた。
「にい…さん?」
「大丈夫、そんなこと思い出さなくていいんだよ、これからの事だけ考えればいい」
「うんっ…」
「さ、オレがついてるから大丈夫、早く寝ないと明日もたないよ?」
兄さんが、私の額に掛かっている前髪を上げ、手をあてた。切れ長の目の端から涙を拭い取り、軽く微笑む。
「ねぇアキト、オレの事、やっぱり嫌いかな?」
私は、ふるふると首を横に振った。
「ホント?」
顔は微笑んだままだが、目は笑っていなかった。どこか悲しげで寂しげで、深い緑の中に色んな事を見透かしているような、皆が…ガゼル達でさえ苦手というあの目、私はこの瞬間にこの目が苦手になった。
「あの誕生日、アキトの全てが変わったよね、隠してて…ごめん、でも、すれ違いたくなかったったんだ」
「ふぇ…?」
私は顔を上げ、涙のかけらが残った目で兄さんを見た。
「オレは、お日さま園の時の関係を保ってたかっかんだ。でも、本当の事を話したら、君は離れていってしまうだろう?…オレの我が儘だったんだ…」
私は兄さんの黒いVネックの袖を掴み、嗚咽の混ざった声で語りかけた。気づいたら、兄さんの膝に乗っていた。
「僕、ホントに…にいさっ…すき…だから…」
「うん…いままで意地悪して、ごめんね?」
「ううん…兄さんは…意地悪じゃないッ…よ…」
「オレは昔から意地悪だよ」
「―っあ…ぼく…ちがっ…そんなつもりで言ったんじゃ…」
「どうしたの、アキト?君が取り乱すなんて久しぶりだね−」
「兄さん…僕は本当に兄さんが好き、兄妹としても、幼なじみとしても…だから、自分の事を嫌わないで、僕、兄さんの事、嫌いになっちゃうよ…」
「うん…ごめんね…」
私は、それだけ言い、兄さんのひんやりと柔らかい腕を引き込むと、そのまま寝てしまった。
「…んっ…」
「あ、起こしちゃったかな?」
コーヒーの良い香りが鼻を抜けた。
「まだ時間あるし、寝てていいよ?」
「ううん、一旦部屋に帰らなきゃダメだし…それに…」
「ん?…どうかした?」
「ごめん兄さん、僕、隠してたことがあるんだ…実は今日、出動するんだ…」
「!?」
出動というのは、試合に行くことを私達の言葉で言ったものだ。つまり今日、私のチーム アクアリウムは、雷門中と試合することになっている。父様が仕組んだ事だった。
「今日の午後3時、河川敷で戦う事になってる…」
「そんなっ…どうして、黙ってたんだ!?」
「私だって、負けたらどんな目に会うか分かってるから、だから、余計に言えなかったんだよ…心配かけたくなくて」
「…」
兄さんは何も言わなかった。私の姿が自分と重なったのだと思う。
「ねぇ兄さん、それ以上は何も望まないから…今日、笑って見送りにきてよ…待ってるから」
そう言って、私は兄さんの部屋を出た。
「ノラン!昨日大丈夫だったか?部屋に帰ってなかったみたいだが…」
部屋に帰るなり、ウルビダが声をかけてきた。
「グランの部屋で寝ちゃったから、泊めて貰ってたんだ。」
「出動指令の話しは―」
「したよ」
3つの文字が紡ぎ出した残酷な事実。
「ウル…玲奈、行ってきます」
「…頑張ってこい」
玲奈姉さんはそう言って、私の頭を撫で回した。
「皆さん、行ってきます!」
私は、エイリア学園のエントランスで大声で言った。
「一発かましてこいよ!」
「オレとデザームの仇、とってきてよ!」
「凍てつく闇の冷たさをを思い知らせてやるのだ!」
皆がそれぞれに声をかけ、送り出してくれた。その中に兄さんはいない、やっぱり兄さんは―
「アキトっ!!」
「兄さん…」
「おっ、やっと来たか」
「ふんっ相変わらず遅い奴め」
「まぁまぁ、終わり良ければ全て良し、間に合ったんだからいいじゃん!」
兄さん…来てくれた…胸がドキドキして張り裂けそうになって、一瞬、大きな寂しさに襲われた。
「アキト…頑張って来てね…」
「うん、ありがとう、お兄ちゃんっ、私、大好きだから…」
私は、微笑み、囁いた。兄さんの表示が少し柔らかくなった。
「行ってきます!」
「全員戦闘準備!」
「「「了解っ!」」
河川敷に着くと、試合は始まった、私はチームの皆に声をかける。
やはり、姉さんがマークしただけある、雷門は強い。
「豪炎寺っ!頼む!」
「ああ!爆熱ストーム!!」
豪炎寺さんとやらの技が、ゴール目掛けて炸裂する。この技は止めるのが難しそうだ。
「シュートブロック発動!」
私は勝ってみせる…兄さん達の名に賭けて!
前半終了 3-2
かろうじて勝ってはいるが、かなり危ない。
「後半、水神乱舞を使う」
「あれって危ないんじゃ…」
チームの一人が聞いてきた。
「大丈夫、特訓したし、勝つためなら…行くよ!!」
「ノラン、あっ―」
後半戦が始まった。
「これが私の全て…水神乱舞っ!!」
私は宙を舞い、それに合わせて水の玉が剣のように鋭く尖る。
「うわあぁっ!」
キーパーの円堂 守が吹っ飛び、一点が入った。その後も続けて技を発動する。だが―
「ガホっゴホっ…」
「ノラン!?大丈夫か?」
「ああ…続けよう」
身体が重く感じ、息が苦しい。
「そんなサッカー、楽しいのかよ!?」
突然、円堂 守が叫んだ。私のサッカーのやり方が気に入らないらしい。
「うるさいっ!!勝つことに意味がある…勝てればいいのだっ!!水神乱舞っ!!」
「その思い…全部受け止めてやる!!正義の鉄拳っ!!」
私は、最後の力を振り絞ってボールを放つ、しかし…
「と…止められ…た…」
私はその場にへたり込んだ。と 同時に全ての光が消えた。
「、っうん?…」
「「気が付いた!」」
「あ…れ?ガゼル?バー…ン」
「無理しやがって!もうすんなよ…こんなっ…こと」
バーンは私に抱き着き、ガゼルは涙を浮かべていた。そして、大事なことに気付いた。
「試合は!?」
「…あのなっ―」
「負けたんだよ」
乾いた声がして振り向くと、グランが立っていた。
「ノランは水神乱舞を使ってしまったようだね、そのことで父さんが呼んでるよ」
「…うん…今行く…」
「待てよ!行ったらお前、どうなるか―」
「分かってるよ!!だから行かなきゃ…」
負けたら捨てられる、皆そう、レーゼもデザームも、捨てられた。
「グラン、行こ?…バーン、支えてくれる?」
「…おう」
バーンに支えて貰い、なんとか立つ事が出来た。
「後はオレが支えて行くよ」
「…グラン、なんかあったら絶対呼べよ!」
「ああ、絶対、ね」
「父様、僕です」
「入りなさい、グランも」
「はい」
中へ入ると、父様がお茶を飲んでいた。少し険しい顔をしている。
「水神乱舞を使うとは…あの技は吉良家に代々伝わる伝統だと言ったのを…覚えているか?」
「はい、一回使う度に身体が朽ちてゆくと教わりました」
「では、何故使った!?あれ程使うなと―」
「全力を尽くしたかったのですが…負けてしまってはだめですよね…」
「…やはり、お前にはマスターは重かったようだな、もうよい、二人とも下がれ」
「…はい」
部屋を出ると、勝手に足が自分の部屋へと向いた。
「ノランっ…」
グランを無視して部屋へ歩こうとするが、グランに左手を掴まれた。
「―っ離して」
「嫌だ」
「離せってんだろ!」
「嫌だね」
そう言いながら、グランは掴んでいた左手を引き、軽々と私の上に被さった。
「なに?何がしたいの!?」
「何も」
「じゃあどいて!」
「嫌って言ってるじゃないか」
くくっと笑いながらグランが言った。私は部屋に帰りたくてもがいた。
「そんなに帰りたいんだったら連れていってあげるよ」
グランは私を飄々と担ぎ上げ、私の部屋へと足を運んだ。
「ちょっ、降ろせ!」
「はい、どうぞ」
グランは優しく私を降ろすと、自分もその横に腰を下ろした。見ると私の部屋だった。
「ノランはまだチャンスが有ると思ってるみたいだね」
「…それがどうかした?」
実際、私はまだ雷門に勝てると思っていた。と同時に、もう捨てられたという恐さもあった。
「今のままじゃ駄目だとも、どこかで思ってるんじゃない?」
「…図星だけど」
「ノランも分かってるんだよね?本当は、」
グランがどんどん私の方に攻めてくる。気付けばもう部屋の隅だった。
「…っ、グラ―」
「君は明日辺り、お日様園に戻らなければならないね。でも、オレは違う、また君を迎えに行くよ?見捨てたりはしない、だって、大切な妹だもの」
グランはそう言って、ニコッと笑った。いや、グランではなく、あの笑顔はヒロト兄さんのものだった。
「ヒロっ兄さ…っひっ…く」
我慢していた涙が次々と溢れ出す。さっきの言葉が、私の心を解いていった。
「オレだって‘アキト’が大好きだよ、色んな意味でね」
私がその言葉の意味を理解する前に、唇が熱くなった。兄さんが、自分の唇を私の唇に重ねてきたのだ。
「っふあ…ん…くっ」
兄さんは更に強引に深くキスをした。でも、やめて欲しいとは思わなかった。
「っは…誓いの口づけだね」
「うん…約束…じゃなくて誓いの方が正しいかな。オレはこの雷門との戦いが終わったら、必ずノランを…アキトをお日様園に迎えに行くよ」
「兄さん…大好き」
「くすっ…オレはアキトを愛してるよ?」
「僕だって兄さん好きだもん」
「好きと愛は違うからなぁ」
私は兄さんの首に抱き着いた。兄さんは、私の額に優しくキスをした。それ以上は何もいらない、私達は愛を確かめ合った。
翌朝、とうとう迎えが来た。
「っ…お早う…?」
「お早うアキト、もう迎えが来てるよ」
「えっ…うそっお兄ちゃん…」
私は何時の間にかヒロトをお兄ちゃんと呼ぶようになっていた。
「大丈夫、オレを信じて?絶対行く、何があってもね、その時は、幸せになろうよ」
「―っうん…」
私はもう一度お兄ちゃんと抱き合ってから、皆に見付からないように、エイリア学園を去った。リュウジや砂木沼も一緒だった。
〜〜〜〜〜
「あっ、ジェネシス負けたみたいだね」
「本当だ」
私とリュウジ兄は、お日様園の炬燵で、ジェネシスと雷門の試合をテレビ越しに見ていた。
「アキト、負けたのに嬉しそうだな」
蜜柑を食べていた、治兄さんがこっちを不思議そうに見た。
「だって…もうすぐお兄ちゃんが迎えに来て、一緒に住めるんだもん」
「俺らも一緒なんだけどなぁ」
横からリュウジ兄が言ってくる
「別にいいじゃん…」
玄関のチャイムが鳴った。
「はぁーい」
古い引き戸を開けると…
「アキト…」
「お兄ちゃん…」
「約束通り迎えに来たよ」
私は笑顔で…涙でくしゃくしゃな顔でこう言った。
「お帰りなさい…お兄ちゃんっ!」
「ただいま、アキト!」
私はお兄ちゃんに飛びついた。
「「これからは一緒だね」」
二人で顔を見合わせ、笑った。
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目も当てられないような作品ですが、これをサイトに置くことが夢だったので。よかったな自分。
多分中一位で初めて書いた夢です。
あの頃ほんとに稲妻好きで狂ってた。
すでに禁忌愛好きだったのか…