「うさぎ」
おとうさんがわたしをよびとめました。
「彼女がうさぎです」
「ほう、この子が」
おとうさんのとなりにいた、しろいかみのけのおにいさんが、あごにてをあててわたしをのぞきこみました。
「はじめまして…」
「はじめまして、私は― ― ―と言います」
「おとうさんのおともだちですか?」
「ええ、貴女の話はお父さんから良く聞きますよ。とても優秀だとね」
おにいさんは、ぎざぎざした「は」をみせて、わらいました。
わたしはなんだかはずかしくなって、したをむきました。
「それじゃ、― ― ― さん、話の続きを、うさぎ、部屋に戻ってなさい」
「はい」
「では、さようなら、可愛いうさぎさん」
おにいさんは、わたしのてをとると、おうじさまがするように、くちをつけました
「ハイッ!!」
こえがうらがえってしまったわたしをみて、おにいさんはわらいながら、おとうさんについていきました。
おにいさんのなまえは…
何だったっけ
あの白い歯は、白い髪は、
何処かで――――――
私は見たことがある。
何時だっただろうか、分からない。
けど一つ確実なのは
それが恋慕の対象から畏怖の対象へと変わったこと
そうだ、確か名前は―――――
prev | next
back