サフェスの話
2016/08/17 00:14

眠る時間がもうずっと来ないが、サフェスは気にしていなかった。神の領域に足を踏み込んで以降、生物的な欲求は以前と同じまま保てるとは限らないと理解していたからだ。だからもう何日も、ものを口にしていないし、眠るということもない。だからと言って何がどうという事もなく、至ってサフェスは通常と変わらなかった。眠くなることはない。眠らないことが原因となって行動や活動に支障が出ることもない。これはこれで便利だとすらサフェスは思っている。何しろ教団の中でもなかなか肩書きの位は上の方なので、やらなければいけない仕事というものがある。余計な事に時間を大幅に取られることがないのは大変よろしい。ただし、それはサフェスが神になってから最初のうちだけだった。ある日の真っ昼間、いきなり意識を飛ばしたのである。ただ、教団本部本館の廊下を歩いている最中に、ふっ、と、ロウソクの火でも吹き消したかのように。次にサフェスが目を開けたときとっぷりと日は暮れて、と言うよりももう夜だった。ついでに何故か西館にある自室に移動していた。床にうつ伏せになっていたのである。特に慌てることはなかったが、どういうことだろうかと部屋を見渡した。窓の外はもう藍色といくつかの粒のような星が空を覆っていて、壁に掛けた日めくりカレンダーの日付は……6日ほど、自分が覚えている日付より進んでいた。神の領域に足を踏み込んだ事、に因る、とんだ弊害だった。



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