第八話

元親と小十郎の気配が部屋から消えたのを確認し、政宗は自分の気を緩めた。
「チッ・・・。俺としたことが・・・。」
暗い部屋の中で襖にもたれかかり、舌打ちをする。

実は遊び半分で元親の願いを聞いてやろうと、政宗はわざと賭けに負けた。
自分の時間が欲しいなどと珍しい事を言われたので叶えてやりたくなったのだ。
しかし、先程不意打ちで抱き寄せられた時、不覚にも元親の匂いを嗅いで心が跳ね上がった。
何だか温かくて心地よくてふわふわした感覚に陥った。
そんな事は初めてだった。だから戸惑ったのだ。
その先に行きたいけど、行ったら自分が自分じゃなくなる気がする。
少し怖い、とも思った。
でもそんな感情も悪くないと感じている自分もいる。
「Ha・・・。俺もついに焼きがまわったか?」
政宗は自嘲気味に笑うと、小十郎に元親が湯浴みから上がったら自室に来るよう念を送った。
小十郎からは小言付きの返事が送られてきた。
「分かった分かった。そう目くじら立てんなよ。」
小十郎の小言をそれとなく躱しながら政宗は自室に向かった。

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