叶わない
例えば、私は月に溺れたいのでした。
あの白く柔らかな光にずっと、ずうっと浸っていたいのでした。
けれど、夜は明けてしまうもので
私の願いが叶えられることはないのでした。
私は夜が明ける度に、目を閉じるのです。
あの明るく輝かしい太陽の光に、涙を流しながら。

あの光は眩しすぎるのです。
私は、身を焼かれる思いをするのです。
私に何も変わりはないというのに。
私はひとときも、耐えてはいられないのでした。
私を帰してください。
私を夜に帰してください。

陽が沈みます。
私は生き返るような心地がします。
毎日、毎日 同じような思いをする中に
私は人らしく嬉しさや悲しさを想うのです。
いつか私は おもい で溢れてしまうのではないでしょうか。
単なる思い込みでしょうか。

私の願いはいつからかひとつになりました。
あの白く柔らかな光にずっと、ずうっと溺れていたいのです。
叶わないことを知りながら、
夜が明ける度にこの願いを想い、涙するのです。


叶うことはなくても
(願い続けてしまうのです。)



――――
しなりさまへ











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