どうしても離せない
氷の上にたっていたのはいつからだった?




どうしても離せない、




目の前で、落ちていく君。
見ているだけではいられなくて、思わず走り出した。
僕が蹴った氷が次々と砕けてゆく。
ああ、ただでさえ足場なんてないのに。
わかってる、
君ならきっと、戻ってこられるのは、わかっている けど。
僕には、君をただ見ていられるだけの優しさはないんだ…
僕は中途半端な優しさしか持っていなくて、
その中途半端な優しさで精一杯、君が少しでも長くここにとどまっていられるように、
何かをしようとしている。
けれど、少しの優しさで、かすかに保たれている君の足場を崩してしまうんだ。
また、ひとつ。





僕は君の手を掴めている?





助けてあげたい、
ここにとどまっていてほしい。
そう願う僕こそが、
君の邪魔をしている。
中途半端な優しさで、
君の手を掴んで離さないで、
引き上げることもしないで、ただ。



とどまっているのは辛い、
動き出せないのは辛い、
けれど日の当たらないところにいた僕は非力で、
君を引き上げることもできなくて、
…手を離す強さも、なく て。




こうしているうちに僕もいつか落ちてしまうのだろうか。






君を掴んで離せない、この手から。



















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