残しておきたい
未来が現在に成変わってゆくさまをただ眺めているのです。
人にはどうすることもできない時の流れを眺めているのです。
残しておきたい
速いものです、時の流れは。
どんなに惜しまれる空間も、時によって消え去ってゆくのです。
あなたと共にしたあの場所も、
私があなたを失くしたあの場所も、
時によって変えられてゆくのです。
その時をかすかに残しながら、
変わることがないなどあり得ないのです。
流れを止めることは、できないのです。
私は……できることなら、あの空間を、あの空気のまま残しておきたかった。
許されぬことと知っていてもそうしたかった。
消え去ってゆくことに我慢ならなかったのです。
あの時の私の想いは何処へ消えてしまうというのでしょう。
私は何もかもをあの空間に置いてきてしまったというのに。
流れを止める術はどこにも無いのでした。
私はただそこを囲ったのでした。
残してしまった想いを留める為に。
囲っても時は流れるのです。
私に想いを戻すことはできないのです。
やはり、私の想いは消えてゆくのでした。
あなたの想いも。
せめて あなたの想いだけでも
(残せたのなら、何かが変わったでしょうか。)
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