切る
今日は一人だ。
親は仕事で帰りが遅い。
姉は友達の家に泊まりだ。
だから、私は自分の為だけに料理中。
苦手という訳じゃないけれど、慣れた手つきでもない。
要するに、あまり料理をしたことがないのだ。
早く食べたいので、インスタントのカレーとサラダを作ることにした。
カレーを作る間にキュウリやトマトを食べやすい大きさに切っていく。
「……っ!」
不覚だ。
指を切ってしまった。
痛くはない。
幸いにも、深くはない様だ。
私はすぐに自分の口に手をもっていき、口に含んだ。
指を噛んで止血をする。
突然だったものだから、
水で洗うという選択肢がなかった。
…顔には出ないが、相当あせっているに違いない。
口の中に広がる血の味。
とまることを知らないかの様に流れ続ける。
口から出した頃には、血は殆ど止まっていた。
……水で洗えばよかった。
今更ながらに思いつつ、指に絆創膏を貼る。
不意に、涙が出てきた。
痛くはない。
なら、どうして?
恐い。
恐いこわいコワイ
恐いのだ。
あんなにも、簡単に。
あっさりと。
人の肉が切れてしまうことが。
何の感触もないことが。
今度は涙が止まらない。
必死にぬぐって、漸く止めた頃には
カレーはすっかり冷めていた。










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