「やっべ!」


只今の時刻……


5時01分


それは、つまり部活が始まっている時間である。
俺こと、丸井ブン太は急いで階段を降りていく。
いや、飛び降りていくの方が正しいかもしれない。
それほど急いでいた。 なんたって部長の幸村くんは時間に厳しい。
ただ厳しいだけならまだしも、その後のことを考えるだけで背筋が凍る。


俺はさっきよりも走るスピードをあげた。
あともう少しで下駄箱……と、言うところで悲劇が起きた。


『え…』

「ちょ……ッ!」



誰かと衝突した。
……むこうは立っていただけなのだか。


「いってぇ……」

『いてて……っあ…すみません…大丈夫、ですか?』


……まさか女の子とは。俺は慌てて


「俺は大丈夫だ。そっちこそ大丈夫か?」


と、たずねた。
本当はもっと気の利かせたことを言いたかったが、それどころではなかった。
一刻も早く部活に行かなければならないからだ。
ところが、そんな思いはこの子の一言で飛んでいった。


『私、強いですから。』


俺は言葉を失った。 正直、訳がわからない。でも、悪い気分にならなかったのは微笑んだ顔が綺麗だったから。

この子は特別目立つ程ではないけれど、とても可愛らしく落ち着いた顔立ちをしていた。
背は低くもなく高くもなく丁度平均くらいといったところか。ブラウンの髪が更にその子の雰囲気を和らげる。

俺は理由もわからないがその子を見つめていたくなった。
まるで、錯覚に陥ったような感覚が俺を襲っていた。


『……どうかしました?』



その一言で我に返った。
一体どのくらい見ていたんだろう……。一瞬のようなかんじだけどすごく長かった様にも感じる。


「いや、なんでもねぇよ。」


俺がそう言うとその子はふたたび微笑みそれでは、とだけ言って歩き始めた。俺はその後ろ姿をただ、呆然とみつめていた。




それは始まりの意味
(……やべ、部活!!)


    
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