恋愛Beginner | ナノ



蔵ノ介とのデートから数日たった。今ではお昼まで一緒に過ごしている。蔵ノ介といるときの女子の視線がすごく痛かったが、段々となれてきた。……名前呼びにはまだなれないけど。


「相変わらず渚の弁当はうまそうやなあ……」

『……今度、蔵ノ介の分もつくってこようか?』

「ホンマに!?」

『蔵ノ介がよければだけどね』

「めっちゃ嬉しいって!」


更に笑顔でおおきに、とか言うから頑張ろうと思わずにはいられなかった。


『あ、そうだ。今日先に帰ってもらってもいいかな?』

「何かあるん?」

『ただの補習だけどね』


嘘だけどね。
いつの間にか私の机の中に入っていた一枚の紙きれ。そこには可愛らしい字で"放課後屋上に来てください"と書かれていた。

その紙きれをポケットの中で強く握りしめた。







さすがに放課後になると少し、暗い。それに屋上となると風の冷たいこと。ああ、手紙の主はまだこないのか……。早くきてくれ。寒い。
思いが通じたのかドアが重たそうな音をたてて開いた。

「お待たせしてごめんなあ……川上さん」

『いえ、今来たばかりです』


これも嘘だけどね。
手紙の主は男子テニス部の美人マネージャー、川崎さん。話の内容は……蔵ノ介絡みだろうね。





  



 モドル