序文
日常と非日常の境目は、いつだって唐突であるものだ。 明らかに形を帯びているくせに、その実、踏み越えてしまうまで人はそのことに気が付かない。晴れと雨の境界のように、夜と朝のうつろいのように、それと意識されないまますべてを飲み込みすっかり見える景色を変えてしまう。 今その足下にある平面を、地面と思っているだろうがそれは本当に正しいか? 頭上に見えている突き抜ける蒼を、空だと思っているだろうが果たしてそうだろうか? まあ、なに、そんなに難しい顔をしなくても大丈夫。人の本分は、ただ無防備に懸命に溺れ流されることにこそ在り。つまり、安心して身を任せてしまえば良いということだ。 それが善かれ悪かれ、行きつく先はきっとその本質の求むるところなのだから―2019.05.18