終わりなんて唐突だ。
あんなに愛し合っていた二人だっていつか終わりが来る。わかっていたはずなのにそれはとても急で、私はただ笑うしかなかった。
「ありがとう」
なんて言ったらいいかわからなくて、胸が詰まる。泣きそうなのに泣けないのは、きっとあなたが昔「泣く女は面倒だ」と言っていたからだと思う。最後まで泣かずに笑っていた私をあなたは不満げな瞳で見据えて、それから、「ばいばい」と出ていった。
とある夏の、暑い日だった。

「また別れたのかよ」
「うん、振られた」
「それで受験勉強中の俺を飲みに誘ったのかオメーは」
「だめだった?」
首を傾げながらくすりと笑うとレオリオは困ったような顔をした。お前が元気ないとなんだか落ち着かねえ、そう言いながら瓶に入った冷えたビールを飲む。夜の風は涼しいから、テラス席があるバーに行こうと誘ったのは私だった。別れてから、ちょうど五日後の風が心地よい夜だった。
「涼しいね」
「夜だからな」
適当に頼んであった料理を食べながらレオリオはもう一度瓶を傾ける。あんなに好きだった彼の煙草の銘柄が、レオリオと一緒なことに気づいてなんとなく複雑な気持ちになる。
「煙草吸うの?」
「あれ? 駄目だっけか」
「いや、彼氏も同じの吸ってた。あ、もう元彼だね」
またレオリオが困った顔をする。別にそんな顔をさせたいわけじゃない。泣きべそをかく私を馬鹿だなあとアホみたいな力でバシバシ叩いて笑ってほしいだけだ。そっと仕舞われた八ミリのそれが、なんだか悲しかった。

「今日はありがとね」
「まあ、元気出せよ」
「ん」
月は丸くて、街を照らす。レオリオは軽く背中を叩いた。
「なんてことはねえよ」
そう言いながらも彼が次の言葉を言い淀んだのはきっと私が泣いていたせいだと思う。あたふたとたじろぐ彼を見つめながら私は別れてから初めて泣いた。あんなに好きだったのだ、痛いわけがない。涙が出ないわけがない。こぼれ落ちる雫は誰かに拾われることもなくそのままアスファルトへと染みてゆく。
「……ありがとう」
飲みに付き合ってくれて、そう言おうとしたら抱き寄せられた。好きだった煙草の匂いに包まれて私は目をつむる。レオリオは何も言わず私の背中を擦っていた。涼しい、夜の風が強く吹いた。
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