[ 5/5 ]

「帰して下さい」




そう言い続けてもう何十分になるだろう。

一向に返してもらえる気配がない。




「雲雀さん。私の話を聞いているんですか?」

「聞いてない」

「聞いてるじゃないですか」

「本当のことをいったら返してあげてもいいよ?」

「はぁ。本当も何も、私はただの転校生なんですって。どうしてそこまで疑うんですか?」




心外だ、というように鈴は深く溜息をついた。

さすがにここまでいえば帰れるだろう、そう思ったのに・・・

雲雀は数枚紙を机の上に出すと、まっすぐ鈴を睨みつけた。




「これは・・・?」

「君がもといたっていう町と学校の調査書。君のいた形跡はまったくない」

「なっ!」

「住所に至ってはいまだ人が住んでいる。ずいぶんとお粗末だね?」




鈴はなにも言葉も返せず、顔をしかめる。

お粗末なのも当然だ。いくら守護者とは言え、相手はただの中学生。

そこまで警戒する必要がない。

そんな考えが甘かったことに小さくしたうちをする。




「・・・雲雀恭弥。ずいぶんと中学生らしからぬことするね」

「で?」

「いいよ。どーせ最終的にはバラすから。私は暗殺者」

「・・・暗殺者?

「といっても、ここにきたのはボンゴレ10代目沢田綱吉の護衛兼守護者の見極めだけどね」

「沢田綱吉・・・あの草食動物か」

「私は彼を護衛しにきた。けど、まだ彼に正体を知られるわけにはいかないの。分かる?」

「ふぅん」

「それだけ。だから、なるべく他言しないでくれる?特に・・・リボーンには

「ワオ。赤ん坊の知り合いかい?」




雲雀は、ここで初めてにやりと笑った。

目を輝かせ、子供のように好奇心が疼いているようにも見える。

根っからの戦闘好きと言うわけだ。




「一応。絶対にいわないで。」

「まぁ、いいよ。君たちの間に何があったのかにはそう興味はないし。けど、風紀委員には入ってよ」

「人の話聞いてた?」

「君、強いだろ?僕と戦ってよ。まぁ、嫌だっていうなら赤ん坊に話すだけだけど」

ふざけないで




カンッ


金属同士がぶつかり合う音が部屋に響いた。

雲雀のトンファーと鈴の持っていたナイフが・・・雲雀の首のすぐ横でぶつかり合っていた。

背中をゾクリとさせる声が雲雀の耳に届く。




「あんまりなめてると殺す」

「・・・へぇ」

「約束よ。私が風紀委員になって貴方の相手をする代わり、貴方は私のことを他言しない」

「いいよ。別に。僕にとって悪い条件じゃない」

「そう」




静かにトンファーからナイフが離れる。


ガンッ!


すぐさま、トンファーが鈴の横を通り過ぎた。

トンっと背中が壁につき、左はトンファー右は雲雀の手によって塞がれる。

それでもなお動じる様子はなく、不機嫌そうな顔で雲雀を睨みつけた。




「どういうつもり?」

「無反応ってつまらない」

「当たり前でしょ。こんなの簡単に抜け出せるわ」

「ふぅん。面白くないな」

「面白い必要なんてなんっ!!




頭の後ろをわしづかみにされ、無理やり前に押し出される。

気付いたときには唇が合わさっていた。

すぐさま雲雀の胸を押すが、男女の差のせいで抜け出すことはできない。

鈴は足を思いっきり後ろに下げ・・・そのまま振り上げ

ひょいっ



足が鈴の狙った場所(つまりピーーッ)に当たる前に、雲雀は鈴を離して後ろに下がった。

してやったりというように、にやりと笑っている。




「それと、僕結構君のこと気にいったから」

「っっ!ふざけないでよ!!」




ごしごしと唇を拭うが、感触が消えるわけではない。

鈴は思いっきり顔をしかめ、近くにあった水道で顔を洗う。



「ワオ。そこまで嫌だったの?」

「悪いけど・・・こう言うのは嫌い」

「ふぅん。でも、僕本気だから」

「本気ならいいってものじゃないから。じゃぁね、雲雀先輩」




最後に一睨み(約束破ったら殺す)して、鈴は応接室から出ていった。

外はすでに薄暗く・・・真っ赤な夕日が廊下に差し込んでいた。


前へ no page


戻る

しおりを挟む

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -