5
(・・・にしても、なんだろうなぁ・・あの雰囲気)
誰かを苛めているようにも見えなかった。
とても明るく和気藹々としている。
肩透かしもいいところだ。
そんなことを考えながら、咲希は寮に向かっていた。
どうやら、ほとんどが寮生活をしていないらしく自宅に帰っていく。
道を半分ほどきたとき、後ろから声をかけられた。
「咲希ちゃん!」
「え?あれ・・京子ちゃん?」
「よかった。はぁ・はぁ・・」
「大丈夫??家に帰ったんじゃ・・・」
「ううん。私は寮だから・・・。あの・・咲希ちゃんって・・
おねえちゃんとかいる?」
突然の質問に、咲希は動揺を隠し切れなかった。
今日1日見て、京子は明るくて朗らかで、いい子だった。
だからこそ、言っていいのか考えてしまうが・・・あれが演技だと言うことも十分に考えられる。
「ううん。いないよ」
「え・・ぁ、そっか!」
咲希が笑って返すと、京子は少なからずほっとしたようだった。
どうしてそんな顔をするのか・・
疑われない程度に聞いてみる。
「何で?」
え・・・えっと・・・・」
「?」
「・・・・ごめん。言えないの」
「私に姉がいると・・・なにかあるの?」
「・・・そういうわけじゃないけど・・・その・・・」
「ぁ、言いにくいなら言わなくてもいいよ?」
「っ・・・ごめんね。でも・・
気をつけて」
「え?」
「今は・・これしか
「京子ちゃん?」っ!・・・ツナ君」
微かに京子の方が震えたのは気のせいじゃない。
いまも、笑ってはいるけれど・・・強張っている。
咲希は内心疑いながらも、ツナに笑いかけた。
「咲希ちゃんも。どうしたの、こんなところで」
「話してて。こんなところって・・・寮に行く道こっちじゃ・・」
「えっ!?確かにこっちもだけど・・・もう1つあるんだよ?そっちのほうが近いし安全だからみんなそっちを使ってるし」
「え゛」
「ここを通ってた生徒が前に痴漢にあって、もっと明るい道を作ったんだ」
「へ・・へぇー(くそ!!G先生の馬鹿やロー!!)」
「先生に言われなかったんだ・・・」
「うん・・・。酷いね・・・」
京子は、相変わらず顔色が悪かった。
ツナは普通どおりに笑っているし、どうしてなのか分からず・・・咲希は内心首を傾げる。
「そういえばさ、咲希ちゃんってどこの会社の子の?」
「え?」
ツ「だってこの学校、そういうコネがなきゃ入れないでしょ?俺は学園長の甥だし」
「あっ!あーぁ・・・」
咲希は言葉に詰まった。
さすがに、もうすでにない会社の名前を出すわけにもいかない。
ジョットの甥だから、ジョットの親類なんて言ったら怪しまれるのは当たり前だし・・・
「(ぴーん!) アッ、アラウディ先生って知ってる?」
「う、うん。初等部の先生だよね?彼の甥が俺の先輩なんだ」
「(げっ、マジで?でもいまさら引き返せない)そっ、その先生の・・・
婚約者なの!!」
・
・
・
・
しーんっとした沈黙が流れた。
(やばい・・・はずした?)
変わらぬ顔のまま、咲希を凝視している2人。
と言うより、固まってるのだろう。
いつの間にか、足が止まり・・・3人ともその場に突っ立っている。
「えっ・・・
本気で?」
「アラウディ先生って・・・ロリコンだったんだね!!」
「(ぁ、)そう??恋に年の差なんて関係ないよ!!」
ツ「そうだけど・・・」
「超ラブラブなんだから!!だから、少しでも近くにいたくてここに入ったの!!」
「じゃぁ、一般人なの?」
「うん・・・」
何とかごまかせただろうかと、咲希が2人を見ると、苦笑しているが疑っている風ではなかった。
内心ほっとしつつ、3人はまた歩き出す。
あとで、謝らなきゃな〜と考えつつ、咲希たちは寮に向かった。
(でも嘘はついてないよね・・・)
[ 5/11 ]
[*前へ] [次へ#]
[main][top]
しおりを挟む