《赤と青》
ぎゅ、
恐る恐るに握られた手は、一瞬ピクリと反応を示すと。ゆっくりと、優しくその手を握り返す
夜、ベッドの上でパチリと目を覚ましたタクシーが。この部屋の主を視界に捉えた
「‥寂しい、のか?」
「‥文句あんのか」
「ううん、ない。お前が寂しいと思った時に、傍に居てやれて良かった」
もう見慣れてしまった彼のへらりと笑う顔を見ていると、どうしようもなく愛しさを感じる。それと同時に、酷く安心する
握った手に少しだけ力を込めれば、まるでそれが合図かの様に。どちらからともなく重ねられる唇
ちゅ、と。可愛らしいリップ音が鳴り、二人は触れるだけのキスを終えた
「‥タクシー、寝ろよ」
「‥嗚呼、分かってるよ。ミラー、お前が居ると、何だかぐっすり眠れる気がする‥」
一緒に居ると安心するんだ。それは、ミラーマンも感じていた事だけれど
言葉に出されると、何だかちょっぴりくすぐったい
「なぁミラー?」
「‥ん?」
「何時も一緒に居てくれて有り難う」
「‥‥お前も、‥な」
互いの手袋越しでしか伝わって来ない体温が、少し焦れったくて。それがとっても心地好い
赤と青。二人の瞳が交わって、自然と笑みが零れ出た
世界中で、誰より君が愛しくて
(大切なモノが、こんなにも直ぐ傍にある。それはなんて、幸せな事なのだろうか)