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160808


「‥おはよう‥ございます先輩、すいません。意識飛んでました」

「な‥っ、お前‥!」


思わず大きな声を出したタクシーの方をちらりと見たタイヤが、彼の様子を見て大体の現状を把握したのか。片腕でタクシーを抱き寄せ、まるで子供をあやす様に優しい声音で言う


「頑張ってくれてたんですね。もう、大丈夫ですよ‥後は俺に任せて下さい」

「任せて下さいって‥駄目だそんなの。お前俺より、ずっとずっと体調悪いんだろ‥」


無理しないで欲しい。そう思うのに、何時も何時も無理をしてしまうのは。タイヤだけではなくタクシーもなのだけれど

それは、互いが互いの事を思うからこそ。そして二人の関係は本体とその付属品である為。

タイヤが、本体であるタクシーを何より優先してしまうのも。仕方のない事


ぐっ、と。足に力を入れタイヤがその場に立ち

未だに立ち上がれないタクシーの腕を掴んで、彼の体を引っ張りあげると、その後タイヤは再びしゃがみ込んで地面に片膝をついた


「ほら、おぶってやりますから。背中乗って下さい」

「‥いや、自分で歩け‥」

「乗らなきゃ殴りますよ」

「‥なっ‥」


早く、とタイヤに促され。そろそろと体重を預ければ、ヒョイと軽々持ち上げられる。彼は、能力こそ低いものの力は誰よりある

だから、風邪を引いていたとしてもタクシー一人おぶる位、どうって事はないのだ



(‥熱い‥)

背中から伝わる熱が、タイヤの調子がどれだけ悪いのかを思い知らせる。聞かなければ、気付かなければ。本当に何も教えてくれない

まるで、信頼されていない様な。悲しい気持ち

「‥‥っ、ぅう‥」

「‥せ、先輩‥?!泣くぐらい体辛いんですか!?ちょっと待って下さい。病院まではまだ‥」


背中におぶったタクシーが自分の不甲斐なさに涙したのを、体調が優れないからと勘違いしたタイヤが。慌てて動こうとした為、彼の視界がグラリと歪む


「‥ッ‥」

傾きかけた体が倒れないよう、足に力を入れて踏みとどまって

はぁ、と短く息を吐いた。


「病院まで、‥もちますか?」

何時ものペースでは歩けないタイヤが、ゆっくりとした足取りで歩き始めながら。背中におぶったタクシーに問いかける。


「‥平気だ」

「そ、ですか‥って、うわ!?」

タクシーの返事に、安心したような声音で言葉を返したと思えば。突然驚きの声に変わる。

それもそうだ、いきなり、歩いてる感覚が無くなってしまったのだから。

例え言葉として使われる『地に足がついていない』とは。正にこういう事なのだろう


「せ、先輩!止めて下さ‥っ!」

「‥大丈夫。急に落としたり、しないから」

「でも‥!」


俺はあんたと違って飛ぶ事に慣れてないんだ。そう続く筈だったタイヤの言葉は、風の音に掻き消された。

タクシーには、車を出す事以外にも幾つかの能力が備わっているのだが。その内の一つに、風を操作する物がある

普段は高く“跳ぶ”位で留めているそれを。突然“飛ぶ”事に使いだしたタクシーは。これ以上タイヤに負担をかけられないと思い行動に移したのだろうが

余りにも急過ぎる出来事に、タイヤは上手くバランスを保つ事が出来ない。ふわふわと体が浮く感覚に、思わずギュッと目を瞑れば

おぶったタクシーが、すり、と。背中に擦り寄る。


「‥もうすぐ、病院につくから‥我慢してくれ。な?」

思わず。びく、と体が跳ねたタイヤがそろそろと目を開け下を見るとその目線の先には、彼の言う通り病院が見えた。


木々に囲まれた森の中。下にいたら、何処を見ても同じ景色だったけれど。上に出れば、大きな建物の周りは視界が開けている為。何処に何があるかが一目瞭然

そして、病院のほぼ真上まで来ると


「‥ごめん、やっぱ‥無理」

「へ‥?」


ガクンッと、体が大きく傾き。重力に従い落下していく二人の体


「あんたさっき落とさないって言いませんでした!?」

「‥あー‥‥も、本当無理‥燃料切れた」

「ふざけんなよクソ車!」


怒鳴り声を出すと、頭がズキズキと痛んだけれど。今はそんな事には構ってられない

急降下していく体が。地面に叩きつけられる前に対処しなければ、幾ら他人よりも丈夫な二人とはいえ只ではすまないだろうから。

けれど。頭の痛みが邪魔をして、まともな事が考えられない


衝撃を受けずに済む方法。例えば、何か柔らかい物が地面と体の間にあれば

衝撃を和らげてくれるかもしれない。


(柔らかい物って何だ‥!?)

タイヤはぐちゃぐちゃの思考の中で。必死に柔らかい物を考えたが。結局何も思い付かない

そこで、一か八かにかけた彼は。バッっと左手を伸ばし地面に向けて


「何でも良いから出ろ!」

無謀と思える能力の使い方をした。タイヤの能力は物質の具現化。食べ物、生き物でなければ記憶にある限り、その物を現実として出す事が出来るのだが


きちんと頭の中でイメージ出来ていなかったり、曖昧な記憶を頼りにすると。とんでもない物が出てきたりもする

そして今回、彼が出した物は


「げっ‥」

「ゆ、雪だるま!?」

白くて、柔らかい雪。それはタイヤ自身最も苦手とする物だけれど

苦手意識が強い分、記憶の中に残りやすくもある。但し、どうしても苦手意識を拭いきれなかったのか

せめて見た目だけでも、と。彼の好みに合わせたような

随分と可愛らしい雪だるま達を、病院の敷地いっぱいに召喚してしまったらしい。恐らく無意識の内に、少しでも衝撃を和らげるつもりで沢山出してしまったのだろうが

元々能力の強い方ではない彼は。今ので力を使いきってしまったようだ。

苦手な雪にこれから落下しなければならない現実と、力の使いすぎで目眩がする。しかし。どうあがいたって、びっしりと並んだ沢山の雪だるまの上に落っこちなければならないのだから

諦めて、覚悟を決めるしかないのだ。


「先輩、俺から手離さないで下さいね」

いざとなったら、タクシーを庇ってやらなくては。


いよいよ覚悟を決めて、未だ背中側にいるタクシーを空中で腕の中に抱き寄せる形に体制を直し。

「‥‥ッ、」

二人は勢い良く雪だるまの上に落下した






病院の入り口傍で一面に舞う沢山の雪の結晶、砕けた雪だるま達がクッションになったとは言え。かなりの高さから二人の青年が落ちてきたのだら

辺りに響いた音もかなりの物。結果として、その音を聞きつけたドクターフリッツが


『何事でしゅか!』と声を上げながら病院の扉を開け放てば。


「こ、こんにちはドクター」

「‥急患二人、お願いします」


白い絨毯と雪だるまに囲まれ倒れたままのタクシーとタイヤが、困った様に笑っていた。



何時も緒にいるからこそ、こんな時でも。人は一緒。


2013/04/23



何やら朝から視界がぐるぐるして、足元が妙におぼつかないと。愛車を停車させ仕事の休憩をとっていた地獄のタクシーが座席のシートに深く腰をかけた。

今はまだ仕事を始めて直ぐだけれど、このまま今日一日運転を続けられるのか正直微妙な所でもある


「‥あー‥何か怠い‥かも」

一度体の不調を自覚してしまうと。一気に襲ってくる倦怠感

座席に体を預け目を閉じ。少しばかり浅い呼吸を繰り返していると、意識が自然と闇に飲まれそうになる

うつらうつらと、夢と現実を行き来していた所で。ガチャリ、と車のドアが開く音

重い瞼をゆっくりと目を開き、誰がドアを開けたか確認すれば。視界に映り込んだのは黒を纏った長身の青年。タクシーの後輩、血塗れタイヤ

「先輩、仕事は‥。って、あんたもしかして寝てました?」

「‥ん‥?」


眠い目をごしごしと擦りながら。生返事を返すタクシーに、タイヤはサボりですかと問いかける

「‥違うよ。只、何か体が怠くて‥」

「‥風邪ですか」


スッ、とタクシーの額に手を伸ばしかけて。タイヤは途中でその手を止めた。それから、まじまじとタクシーを眺めた後に

「顔が少し、赤いですね。しかもさっきから仕事に集中出来てないみたいですし。今日は休んだら良いんじゃないですか」

と、そう言った。


一瞬、彼の行動に違和感を感じたタクシーだったけれど。タイヤが体を気遣ってくれる事が有難い

下手に無理矢理仕事をさせられるより、一日休ませてもらって。体調が良くなってから仕事をした方がはるかに効率が良いからだ

「ありがと」

へらん、と。緩く笑みを浮かべて礼を言えば

『どういたしまして?』と語尾の上がった返事。タクシーが仕事を休むという事は、必然的にタクシーの“足”として働くタイヤも一日仕事がなくなる訳だが

あまり気にはしていない様子。それどころか、タイヤの表情は何処か安心しているような。そんな顔


些細な変化。でも、それを見逃せば

此方から気付かなければ。大事な事は何一つ伝えてこないタクシーのタイヤ。先程手を伸ばしかけて触れて来なかったのも。今、休みになって安堵した表情を見せたのも。他の人では気づく事のない違和感だけれど

「‥タイヤ」


その変化に気付けるようにならなくては。この“タイヤ”の主人は勤まらないのだろう


不意に、今度はタクシーの方からタイヤへと手を伸ばすと。そっと額へ手を置く

「熱い、な」

「‥っ!?」

体温の上がった体でも分かる程に、手袋超しに触ったタイヤの額が熱い。

タクシーに触れられる事を想定していなかったのか、思わず一歩後退り、車から離れたタイヤがフラりとよろける


「た、タイヤ大丈夫か!?」

慌てて運転席から飛び降りたタクシーが。よろけたタイヤの体を支えるが、元々タクシーの方も足元がおぼつかない状態だった為

「わぁ!?」

「なっ!?」


二人は共にドサリ、と倒れ込んだ。



「‥‥っ、」

倒れる前、タクシーはタイヤを支える様に立っていた。だから、地面に倒れて受ける衝撃は二人分。タイヤがタクシーの上に倒れ込む形になる、はずだったのに。何時まで経っても襲って来ない衝撃に

恐る恐る目をあければ、何故かは分からないけれど。タクシーの方がタイヤの上に倒れている状態で、咄嗟にタクシーを庇って自分が下敷きになる様無理矢理方向を変えたのか

しっかりとタイヤの両腕の中で抱き締められていた。

「な、何で‥」

「っ、は‥怪我、してないですか先輩」

「何で、何で俺の事庇ったんだ馬鹿!お前怪我は?」

「馬鹿って酷くないですか‥あ、怪我なら大丈夫だと思いますよ。ほら、俺あんたより体丈夫ですし」


馬鹿と言われた事が気に食わないのか、ムッとした顔をするも。はぁ、と小さく息を吐いて

くたりと脱力するタイヤが、小さな声で、頭が痛いと訴えた。


「‥それはそうと。すいません先輩、あんたに風邪移したの多分‥俺です」

聞けば一週間も前から具合が悪かったのだと。タイヤは言った

そんなにも前から体調不良を起こしていたのに。ずっと傍に居たのに。何も気付いてやれなかったと

タクシーの胸がズキン、ズキンと押し潰されそうな位に痛み出す。

最早タイヤの上から避ける事すら出来ない程の倦怠感に襲われながら。只々、彼の黒いスーツに顔を埋める事しか出来なくなったタクシーが。ぐすっ、と小さく涙ぐんだ


「また泣いてんですか」

「‥泣いてない‥」

「‥あ、そ」

「タイヤ‥」

「何ですか」

「‥ごめん」

「‥謝らないで下さいよ。泣きながら謝られたら、まるで俺が悪いみたいじゃないですか」

「‥泣いてないよ」

「はいはい、分かりました」


自分の腕の中で泣いているタクシーの背中を、ポンポンと。撫でて宥めてやれば、少し落ち着いたのか

目に涙を溜め顔を上げたタクシーと、タイヤの視線が合わさった。


「‥ほら、泣いてる‥」

「‥煩いよ」

「‥ふ、‥あんた、本当に泣き虫‥だよな‥」


タクシーの頬に手を添え、一瞬柔らかい笑みを浮かべたタイヤ。その表情を見ると、どうしてかは分からないが。酷く安心する

けれど、安心したのも束の間。頬に添えられていたタイヤの手が、力なく地面に落ちると

彼はそのまま気を失った。


「ッ、タイヤ!タイヤ!?」

恐らく相当我慢していたに違いない。一週間経った今でも、タイヤの体温はとても高く。

熱に浮かされながら仕事をこなし。くたくただった所に来て、先程本体であるタクシーを無意識に庇った結果。疲労が限界を迎えてしまったのだろう


意識を失ったタイヤの呼吸は乱れ、苦しそうに肩で息をしている。

「タイヤ‥ごめん、ごめん‥俺、‥おれ‥っ」

泣いている場合ではないと分かってはいるものの、元々涙腺が強い訳ではないタクシーの青い瞳から、涙が次から次へと零れ落ちる。

(落ちつけ、まだ‥タイヤは原型に戻ってない‥。気を失ったけど、人型を保てない程弱ってる訳じゃないんだ‥)


黄色い制服の袖で、乱暴に目元を擦ったタクシーが。思うように力の入らなくなった体に鞭打って、何とか起き上がると意識の戻らないタイヤの腕を肩に回し、自分よりも背の高い彼をズルズルと引き摺って森の中を進んでいくが

暫く森の中を彷徨い歩いた所で、足を止めた。



(‥此処がどこだか‥分からない‥)

方向感覚のないタクシーは、病院がどちらの方角にあるのか。分からないのだ

右を見ても、左を見ても。辺りにあるのは沢山の木々達だけ


普段。移動する時はタイヤに道を教えてもらっていた彼にはこれ以上どうする事も出来なくて、その場に力なくへたり込む。


「‥どうしたら良いんだよ」

車を出す体力も残ってはいない。仮に今車を出せたとしても、タイヤが居なければ車は只の鉄の塊

「‥っ、」


再びじわりと滲んだ視界の端で、黒い色がゆらりと揺れた。


2013/04/22



よくある事。と、言ってしまえばそれまでだけれど


「俺と、遊んで下さい」

「‥嫌だよ」

「あんたに拒否権はなしですから」

「‥っ、」


こんなにも楽しそうに迫って来られると。俺の方までおかしくなってしまう

遊んで欲しい。


純粋に言ってくれる言葉なら、俺だって幾らでも遊んでやるし。どんな馬鹿げた事にだって付き合ってやれる自信はある

だけど。こいつの、タイヤの言う遊んで下さいの意味は。もっと別の意味だから

出来る事なら、逃げ出したい


(今ならまだ。逃げられそう)

迫られている、と言っても。逃げ道がない程徹底されている訳でもない

強いていえば。前にタイヤがいて、俺の直ぐ後ろに壁がある位。ぴったりと背中を壁につける体制で

対面する後輩にクイッ、と顎を持ち上げられた



「俺から、逃げられるとでも思ってるんですか?」

「‥な、んで」

心を読まれたのではないかと思う程。タイミング良く問われた質問に。俺が驚きを隠せずにいると、クスクスと笑われ

口を口で、塞がれた。


「ん、ぅ‥」

「‥俺は‥先輩の考えてる事なら、何となく分かりますよ。だって、あんたって凄く単純ですから」


至極楽しそうに。タイヤが笑う

それから戯れつくように。何度も何度も、タクシーの頬にキスをして。それでも物足りないのか

次にタクシーの右手を取ると、手袋越しにキスを送る。

「‥‥や、やめ‥」

ビクリと跳ねたタクシーと、顔を上げたタイヤの目が合い。

タイヤが意地の悪い笑みを浮かべたのを見て、次に彼の取るであろう行動の予想がついたタクシーが。彼の傍から離れようとするが逃げられない




「手袋脱がされてるだけなのに、なにコーフンした顔してんの?‥‥この、へ、ん、た、い」


2013/04/02



まとめてた3日分一気にいきますねーヽ(´ω`ノ)゙


■思考(感情的>理論的)

タイヤ≧タクシー


俺はあまり物事を深く考えて動くのは得意な方ではないけれど。それでも、そんな俺よりも後輩の方が

感情的な面で動く事が多いかも知れない。

(笑顔で怒ってる時が一番怖い‥かな)

俺の後輩は。楽しくて笑ってる時と、怒って笑ってる時があって。

「った、いたい!やめろ馬鹿!」

現在前者真っ最中

「痛いですか?仕方ないですね、なら痛みがなくなるまで殴ってやるしかなさそうだ」

「逆転の発想‥!」


綺麗な笑顔で笑って。俺を殴る後輩が、俺には正直理解出来ない

力任せに殴って来るもんだから。



■身長(高い>低い)

タイヤ>タクシー
 
車輪「先輩は、もっと小さくても良いと思うんですよ」

車「そうかなぁ。あんまり小さくてもどうかと思うけど」

車輪「完全に設定ミスですよね」

車「人の身長に対して設定ミスっていう発言はおかしいだろ」

車輪「もっと小さければ、可愛いげの一つもあるって言うのに‥」

車「悪かったな可愛いげなくて」


2013/04/01






夢主用ミラーマン。仮面とかなくて、直接顔にヒビ入りましたパターンです


2013/04/01


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