[ クラサメ×エース /FF零式・シリアス ]









苛々する。



自分達0組が犯したミスで、何故あいつが責任をとらなくてはならない。

そもそも、ミスと言ってもただ上層部が0組に責任を擦り付けただけなのだが。

白虎領でふらふらと彷徨っていた自分達を、無理を言って飛行船を出し助けてくれたのはあいつ。

命からがら帰って来た自分達に、よく帰ってきてくれたと声をかけてくれたのもあいつ。

それなのに、何故あいつが戦場へ赴かなければならない。



苛々する。

思わず今日何度目かの溜息をつく。

授業を適当に聞き流しながら、頬杖をついて教壇に立つあいつを見る。



相変わらず表情一つ変えない。

いつもの涼しい顔をして授業を続ける。

そんな姿を見て、更に苛立つ。



何に対して苛立っているか、エースは自分でも分からなかった。

ただ、そのいつもの冷めた表情を見ていると不安で。

何も言わない、弱音を吐かない大人なあいつが、何も言わずに自分の記憶から消えて逝ってしまいそうで。

怖くて、でも何も言えない。

何を伝えればいいのか分からない。

エースの中の色んな想いがぐるぐる混ざって、だがそれは一つになる事はなくて。

そんな複雑な気持ちに、エースは心の中で舌打ちをした。



そうこうしているうちに、授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。

教室の何処かで「やっと終わったー!」だとか、「リフレ行こう」だとか、「そもそも魔法というのは...」だとか。一気に騒がしくなる。

教壇の上のあいつは、最後に課題を出した。







ルブルムの景色が一望出来る場所、テラス。

そこのベンチはエースの気に入っている場所だ。

そこで気持ちを落ち着かせようと思い、足早にそこへ向かう。

だが、そこは既に先客が訪れていた。





「....、」



何でよりによってアンタが。

心の中で舌打ちをする。



「エースか」



あいつはいつもの冷めた表情で此方を見遣る。



「先程の授業は何か考え事をしていたようだが。悩みがあるなら聞くぞ」



「っ、誰がアンタなんかに...!」



反抗心をむき出しにしてそう言うと、あいつは自嘲気味に小さく笑って。



「そう言うだろうと思った。...どうかしてるな、私も」



そう言ったっきり、何も言わなくなった。





「...何がどうかしてる、だ」



言っている自分でも驚くぐらい自分の声が震えている事が分かった。

自分より背の高いあいつをじっと見据える。



「...っ、辛いなら辛いって言えよ。怖いなら怖いって言えよ。泣きたいなら、泣けよ」



エースの中の、決して一つにならなかった想いが今、溢れ出している。

一度溢れ出た想いは止まらなくて。

文脈が滅茶苦茶な想いを、ゆっくり、一言一言噛みしめるように言う。



「今回のミスだって、アンタが責任を取る事ないだろ。そもそも、僕達は女王暗殺なんてしてないけど、僕達が責任を取るべきだろ。...どうして、アンタが...」



やっとの事でそこまで言うと、エースは小さく息を吐き出す。

目の前のあいつは黙ったままだ。



「僕は、...アンタがいつの間にかいなくなってしまいそうで、...怖いんだ。...言ってくれよ、必ず生きて戻るって。そんな、辛気臭い顔せずに」



あいつの手が此方に伸びてきて、エースの頬を親指で拭う。

その時、エースは初めて泣いている事に気付いた。

そして、躊躇いがちに抱き締められる。

エースの耳元にあいつの口が近づいて、囁くように言う。



「...課題、ちゃんとやっておけよ」



それだけ言うと、エースを解放して踵を返す。

エースは、その後ろ姿をただ見つめる事しかできなかった。









明日、戦場へ赴くあなたへ贈る言葉

( 信じていいんだよな )









Title Thanx...阿吽 様






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