[ マキナ×エース/終わり ]





“皆と一緒でよかった”。泣き笑いの表情のシンクが発した言葉に、エースを含めた全員が同感した。死ぬのが怖い。今まで怖いものなどなかったはずなのに。自分達が死んでも、残された者は誰も自分達の事を覚えていない。最初はそれに感謝していたが、今となっては恐怖を覚えた。それなら。エースはふと閃いた。それなら、僕達が存在した証を残せばいい。こうして、エースの提案により教室に朱色の旗がたった。その周りを12人が手を繋いで囲む。皆で一つ。昔からマザーに言われてきた言葉を思い出す。そう、僕たちは12人でひとつなんだ。





身体の全身が痛い。身体がうまく動かない。粉砕した教室の壁からはやわらかな光が差す。嗚呼、もうそろそろなのか。エースは薄れゆく意識の中で、自らの死を悟った。自分が存在した証をこの教室に残したところで、果たして誰が自分を見つけてくれるだろう。エースはふとある青年の顔が思い浮かんだ。マキナ。頭に青みがかった黒髪の青年の顔が浮かぶ。





「...何か言いましたか?」





「あ、...否、別に何も」





どうやら口に出してしまっていたらしい。エースの左手を握っているデュースが不思議そうに首を傾げる。その表情は喋るのがやっと、といった様子だ。デュースの冷たい右手は、弱弱しくエースの左手を握る。





マキナ。今度は口に出さないように心の中でそう呟く。マキナ。マキナ。名前を心の中で呟くだけで、会いたいという気持ちでいっぱいになる。不思議だ。エースは静かに目を閉じる。何故会いたいのだろう。彼は兄を殺したも同然の僕達の事を恨んでいた。あの小さな廃屋で口喧嘩もした。0組の仲間としてではなく、敵国のルシとして対峙した事もあった。嫌いになって同然なのに、どうして会いたいと思うのだろう。目を開けて隣に視線を移せば、デュースは眠ってしまっていた。





「...おやすみ」





そうそっと小さく声をかけてやる。どうやら、エース以外の皆は眠ってしまったらしい。それでも彼らの事を覚えているという事は、やはり自分達は12人でひとつらしい。





会いたい。その気持ちとは反対に、意識が遠のいていく。どうしてこんなにも胸が苦しい。どうしてこんなにマキナの事を想ってしまうのだろうか。エースは死に際で自問自答する。今まで感じた事のない切ない気持ち...、そうか分かった。僕はマキナの事が好きだったのか。ようやくその答えに辿りつくと、エースは再び静かに目を閉じた。口元は微笑んでいるのに対して、青い瞳の閉じられた目尻からは一筋の涙が伝う。





教室の破壊された壁から見える青い空には、虹がかかっていた。







来世でまた、会いましょう

( そうしたら、僕の初恋の続きをしよう )







title thanks... 阿吽







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