[ マキナ×エース/来世のお話 ]





雪のように白い肌、光り輝く金色の髪、そして、見つめられると心の中まで見透かされそうな程青い瞳、とはよく言ったものだ。エースは屋上で一人、カフェオレを啜る。そのような誇大表現はいらない。確かに、この学校ではこのような外見の者は少ない。だから、このように特別視されるのは分かっている。





グラウンドには生徒が数人、サッカーをしている。クラスメイトだ。先程教室で誘われたが、ゆっくり食事がしたいと断った。実のところ、エースは外で運動するよりも図書室で静かに本を読むのが好きであった。もちろん、勉強もスポーツも二重丸のエースにとっては、クラスメイトとサッカーをする事は何の問題もないのだが、今はそんな気分ではないのだ。エースはぼんやりとグラウンドの風景を眺めながら、昼食のコッペパンに口をつける。最初という事もあり、中に挟んでいるイチゴジャム&マーガリンのフレーバーにまだ辿りつけない。味気のないコッペパンを咀嚼しながら、カフェオレを手に取った。





「先客がいるとは思わなかったよ」





背後から不意に声を掛けられる。エースは声がした方を振り返ると、青みがかった黒髪の男子生徒が立っていた。「隣いいかな?」と柔和な笑みを浮かべた彼に、カフェオレの援助によりようやくコッペパンを飲み込んだエースは首を縦に振った。





「君、特進クラスのエース...、だよな?俺のクラスでも有名なんだ」





ガサガサとビニール袋を漁る彼の表情は何処か嬉しそうだ。専ら、有名人と話せて嬉しいのだろう。エースはそう自嘲気味に判断した。コンビニで買ったのであろう、おにぎりを手に取り、包装を破り始めた。エースは、その様子を横目でぼんやりと見守る。包装を破り終わりおにぎりを取り出す。ああ、海苔の端が包装のビニールに残ったままだ。エースは心の中で勿体無いと叫ぶ。しかし、美味しそうにおにぎりを頬張る彼にはその声は聞こえない。おにぎりの包装を破るときは、最初の上からのビニールの紐を完全に裏まで破ると綺麗に取り出せるのに。





「...君も食べるかい?」





「...否、大丈夫だ」





気付かないうちに彼のおにぎりを凝視していたのであろう。彼はエースの恨めしげな視線に気付いてまたもやガサガサとビニール袋を漁り、まだ封を切っていないおにぎりを差し出した。エースは首を横に振り、その好意を断った。危ない危ない。エースは心の中でホッと息を吐く。外見ではクールに断っているように見えるが、内心ヒヤヒヤである。





「...あんた、名前は?」





「...え?」





「だから、あんたの名前」





おにぎりの海苔をあれだけ残したのだ。エースはそれが許せなかった。せめて名前だけでも覚えておこう。そんな軽い動機で彼に名前を訊いた。理由はそれだけではなかった。相手だけ自分の名前を知っていて、自分は相手の名前を知らないというのはエースにとって気に入らなかった。ただそれだけの理由なのに、どうしてだろう。エースは以前この男と会った事があるような気がした。否、今までにこのような男は会った記憶はない。ただの気の所為だ、気の所為。一方名前を訊かれた彼はというと、まるで鉄砲玉をくらった鳩のように呆けていた。まさか、名前を訊かれるとは想定外だったのだろうか。エースは可笑しくなって笑いを漏らす。彼は恥ずかしそうに「笑うな」と一蹴した。





「俺はマキナ。マキナ・クナギリだ」





「マキナか...。覚えておく」





彼の名前を確認するように復唱する。なるほど、何処かで聞いた事があるようなないような。それでいて泣きたくなるような、今すぐにでも抱きつきたくなるような。きっと同じ名前の人が過去にいただけだ。エースはそう心の中で結論付けた。何処か嬉しげなマキナは再びおにぎりを頬張る。エースもコッペパンの存在を思い出し、己が口を付けた部分に視線を移す。良かった。イチゴジャム&マーガリンの赤と白が顔を覗かせている。これでしばらくはカフェオレに世話になる事はなさそうだ。それより、マキナという名前を聞いただけだが、彼とは仲良くなれそうな気がする。今度、上手におにぎりの包装を破る方法を教えてあげなければ。新たな友人に期待を膨らませながら、エースはコッペパンにかじりついた。







ランチタイムハピネス

( こうして僕達は再会した )





title thanks... 阿吽 様







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