[イヴ→ギャリー/Ib ]



左手が温かい。



お父さんやお母さんと一緒にゲルテナ展に来たはずなのに、妙なところに迷い込んでしまった。

その中で倒れていた男性、ギャリーを助けたところ、一緒に行動することになった。

今まで一人で歩いたのは本当はすごく怖かった。だから、久し振りに触れる人の温もりは本当に温かかった。



手を繋いでいる相手を見上げる。

此方に気付いたギャリーが優しく微笑みながら「どうしたの?」と此方を覗きこむ。

それだけで嬉しくて、怖い気持ちもすぐに何処かへいってしまう。

「なんでもない」、繋いだ右手を思いっきり握れば、ギャリーは「変なの」と笑った。





真っ暗な廊下。

目の前には、ギャリーが眠っている。

表情は薄紫の髪で隠れていて分からない。

わたしは、茎だけになった薔薇を、そっと彼の手に握らせた。

その手には、以前のような温もりはなかった。



「ギャリー、おきて」



ギャリーの肩を揺する。

だが、ギャリーの頭がガクガクと肩と連動して揺れるだけで。



「マカロン、たべにいくんでしょ?」



視界がぼやける。

頬に生温かいものが伝う。



「ねえ、ギャリー」



揺する気力も失せた。

わたしの頭を、ギャリーに押し付ける。

次から次へと涙が溢れてくる。



どんなに名前を呼んでも、肩を揺すっても、ギャリーは目を覚まさなかった。

幼いわたしが、初めて痛感した別れだった。



ふと、何かが落ちる音がした。

音がした方を見ると、ライターが落ちていた。ギャリーのものだ。

そのライターを手に取った。



わたし、つかれちゃった。



ギャリーの隣に座って、そっとギャリーの手を握る。

おもむろにわたしの赤い薔薇を取り出し、ライターの火をそっと近づけた。

ライターの火は、赤い薔薇に負けず劣らず、赤く紅く燃えていた。





果て無きこの道を帰る術はない

( ずっといっしょだよ )







Title Thanx...阿吽 様



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