[ 勝呂×廉造/いちゃこら ]







「んっ、ふ...」



夜。空には月が上っている。

辺りは闇に包まれ、くちゅくちゅと卑猥な音だけが響く。

深い口付けから名残惜しそうに唇を離せば、自分と相手の間に銀色の糸がひく。

俺、勝呂竜士は、目の前で長いキスに顔を火照らせている恋人、志摩廉造を見つめる。



「っ、坊。...長すぎや。息が、もたん。それに..、此処、外...っ」



苦しそうに息を整えながら、途切れ途切れにそう言う志摩。

夜だということもあるのか、それとも此処が寂れた旧校舎の裏側だからなのか、人の声はおろか、夜でも賑わう商店街の雑音さえも聴こえない。

薄ら目尻に涙を溜めて此方を見つめる志摩は、この上なく色っぽく見えて。



「当たり前やろ。ちゅーは長いもんゆうて決まっとる。..それに、誰もおらんやないか」



ふい、と視線を逸らす。

そうするのは、今すぐにでも俺が志摩を無茶苦茶にしてしまいそうで怖かったからで。



「...何やそれ」



ぷっ、と吹き出して笑われる。

笑われた事に対して少しムッとしたが、よくよく考えてみれば何て無茶な事を言ったのだろうと、自分を恥じた。



「せやかて、ちゅーは短くてもちゅーやで?」



悪戯っぽく笑みながら此方を見てくる志摩。



「...煩いわ」



少しムッとしながら、顔を背ける。



「例えば...、こんなんとか」



志摩はそう言って、俺の頬に軽くキスをする。

一気に顔が火照るのが分かる。

そんな俺の様子を見て、志摩は声をあげて笑った。

ムッとしながら、相手に向き直る。

きょとんとする相手を気にせず、黙ってそのままずいずいと詰め寄る。



「...何や坊。俺がちゅーした事怒ってはるん?」



志摩が後ろにじりじりと後退りながら言う。

遂には志摩が建物の壁に突き当たる。

後退り出来ない事を知った志摩は横に逸れようとするが、それは壁に手をついている俺の腕によって阻まれた。



「...、坊?」



顔を引きつらせながら此方を見つめる。

俺は、口角を上げてにやりと笑んで。



「志摩は長いちゅーと短いちゅー、どっちがええんや?」



「ちょ――」



何かを言おうとした志摩の口を、俺の口が塞ぐ。



「んっ、...」



相手の口から声が漏れる。

僅かに開いた相手の口の隙間へ自分の舌をねじ込み、そのまま相手の舌と絡ませる。



「んっ、ふ......ん、」



舌で歯列をなぞれば、びくんと相手の細身の身体が小さく跳ねる。

志摩の目に、薄らと涙が溜まる。

頬は火照り、耳まで真っ赤に染まっている。

そんな志摩を見る度、下半身が疼く。

志摩が愛しい。もっともっと、志摩を独占したい。

そんな感惰に駆られる。

息が続かなくなったのか、志摩が俺の胸板を弱々しく叩く。

俺は名残惜しそうに唇を離す。



「っ、はぁっ、坊っ、」



志摩は、上ずった声で俺の名前を呼べば涙目で此方を見つめる。

俺は沸き上がってくる感惰を抑えながら、相手の唇に触れるだけのキスをする。

突然の激しいキスの後の優しいキスに、志摩は頬を赤くして俯く。



「...で、どっちがえかったんや?」



「...ヘ?」



志摩が顔を上げる。



「ちゅー。短いんと長いん、どっちが気持ち良かったん?」



志摩はその言葉を聞くなり、ゆでタコのように赤くなった顔をさらに赤くさせて。



「....坊のドアホ」



そう言って、そっぽを向いた。







キスの仕方

( .....誘ったのはそっちの方やからな? )















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