[勝呂×志摩/授業中にイチャイチャ]






最近ついていない。

昨日も今日も、星座占いで順位が下の方だったし。

教科書を家に忘れるし、奥村先生にあてられて答えを言うとき声が裏返るし。

占い通り、最悪な運気。

否、自分が悪いだけなのかもしれないが。

はあ、と自然に溜息が出る。



「何溜息ついてるんですか、志摩くん」



突然、奥村先生に注意される。

突然の事にびくりと身体を震わせるも、志摩廉造は眉を下げて締りの悪い笑みを浮かべて。



「すんまへん。ちいと考え事しとって...」



そんな俺の顔を見て敵わないとでも思ったのか、「授業に集中して下さい」と鋭く言い放つと、先生は授業を再開した。

気持ちを入れ替えて授業に集中しようとするが、そもそも教科書を忘れてしまったのだから、先生の説明が全く分からない。

どうしようもなくなって、助けを求めるようにちらりと横を見ると、坊こと、勝呂竜士が一生懸命ノートをまとめていた。

先生のどうでもいい一言まで、ノートの隅に走り書きしてある。

「相変わらず、坊は真面目やな」などと思っていると、坊が此方に気付いて。



「教科書忘れたんか」



小声でそう言われる。

その問いに苦笑しながら頷くと、坊は「しゃあないな」とでも言うように、黙って教科書を俺と坊の間に置く。



「すんまへん」



小声でそう言うと、坊は返事の代わりに微笑んだ。

その普段あまり見せない表情に、不覚にもドキッとしてしまう。

慌てて前に向き直るが、先程の笑みを思い出すと頭に血がのぼるのが分かる。

「俺は乙女か」、そう心の中で自分にツッコミを入れる。

火照る顔を冷まそうと自分の両頬に手をあてていると、坊が此方の様子に気づいて。



「大丈夫か?顔、えらい赤くなっとるで?」



心配そうに此方を覗き込んでくる坊。



「――ッ、大丈夫です」



ふい、と顔を背ける。

「これは反則やろ」と内心思いながら、未だに頬は火照ったまま頬杖をつく。



「大丈夫やないで。熱、あるんと違うか?」



坊は心配そうにそう言えば、自分の額と俺の額に手を添える。



「―ッ、」



何か言おうと口を開き掛けたとき。



「志摩くん、勝呂くん。そんなに僕の授業が退屈ですか」



前を見ると、奥村先生が黒い笑みで此方を見つめていた。



「二人とも、今日教室に残って掃除をお願いします」



「先生、待って下さい。志摩が―」



「掃除をお願いします」



坊は多分、俺が熱があるんじゃないかと先生に言おうとしたのだろう。

だが、奥村先生のあの笑みで言葉を繰り返されたら、もう何も言えなくなった。



掃除をするのは面倒だが―。



不服そうな表情をした坊の方をちらりと見る。



――坊と一緒なら、悪くないか。







真ん中の教科書

( 明日は教科書わざと忘れよ )















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