イベントログ | ナノ
小さな誓い大きな愛




「雨、か…」


窓越しに外を眺めながらため息とともにもれる声。
今日は七月七日。俗に言う七夕だ。
だが、あいにく天気は雨。
空には天の川どころか星ひとつ見えない。そんな、夜。


「おい、いつまでここにいるつもりだ?」


後方には腕組みをしながら顔をしかめている宮地がいる。
練習を終えてもなお、弓道場から離れない私を心配してくれているのか“先に戻ってていいよ”と声をかけても一向に戻る気配はない。


「寂しいね……」
「は?」


空を見上げながらぽつりと呟く。
あまりに唐突ななまえの発言に一瞬、戸惑う宮地だがすぐに彼女の言葉が何を意味しているのか理解する。


「織姫と彦星のことか?」
「うん。せっかく年に一度だけ会える日だっていうのに、雨なんて……」


好きな人と会えない毎日なんて退屈に決まっている。
それでもきっと二人は年に一度だけ会うことの許される今日を楽しみにして生きている。
それが、雨ごときで会えなくなるなんて悲しすぎる。


「私だったら耐えられないな…」
「……諦めるのか?」
「え……?」
「お前は会えなくなったらどんなに好きになった男でも諦めるのかと聞いている」


そんな経験はないからわからない。と言いたいところだが、自分のことはきっと自分が一番理解している。


「ううん。諦めない」


諦められるわけがないし嫌いになれるわけもない。
一度好きになった人をそうも簡単に諦められるようであれば、それは始めから恋じゃない。ただの思い違いだ。


「お前の気持ちと同じだろ?二人だって」
「そっか…そうだよね」


納得したように微笑むなまえ。
宮地はそんな彼女の隣に腰をおろした。



「来年は見られるといいな」
「うんっ」
「……っそのときは!」


いきなり声を張り上げた宮地に驚いて、なまえはびくりと肩を揺らす。
何事かと視線を向けるが、彼は頬を少し赤らめながら言葉をつまらせている。


「なに?」


決意を固めるためにか呼吸を整えると一度だけなまえの瞳と視線を合わせ、すぐに逸らした。


「また二人で、見るか…?」


勇気を出して言ってくれた言葉を笑うのは申し訳ないが、思わず笑みが零れる。
こんなことを言うのですら照れてしまう彼はホントに可愛い。
(そんなこと本人に言ったら間違いなく怒られるだろうけど)


「当たり前でしょ?」


なまえはもう一度空を見上げる。
気がつけば雨は止み、雲もだんだんと流れて行く。
二人がまた会うことのできるように願いをこめて、宮地とともに弓道場を後にする。



I swear by God.
The ageless love.
I love you more than anyone.



神に誓おう。
永遠の愛を。
私は誰よりもあなたを愛しています。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -