金造と歌い手
・金造が祓魔塾生時代
・主人公は学校では地味っ子を装う25動では有名な歌い手
・何時か中編で遣りたい
「────…、───、…──、」
まるで、不浄の空気が一気に澄み渡っていく感覚だった。
口ずさまれるメロディーは微かなモノでしかなかったのに、唯の鼻歌でしかない声なのに。
「…人魚(セイレーン)かい」
正十字学園の屋上、昼休みも終わり掛けている頃合い。
先に来ていたのは俺で、屋上の隅にある貯水タンクの上でジャンプを読んでいた。
後から来たのが彼奴、屋上に誰も居ないと思ったのか安全対策として囲まれているフェンスに凭れ掛かって聴き覚えのある邦楽を口ずさんでいる。
顔は見えんからかわええとかは分からんが、声はえらい好み。
すっごい好きや、正直。
てか、何処んとこの女やろか。
貯水タンクの上で寝転がりながら下を覗き込むが、クラスも学年も此処からじゃあ見えずによく分からない。
其れでも身を乗り出して顔を見ようと無駄な努力をしていると、手に持っていたモノが不意に滑り落ちた。
「あ、」
あかん。
そんな事を思った数秒後、貯水タンクから屋上のコンクリートの上へ紙の嵩張る音を立てて落ちた今週のジャンプ。
其の音に驚いて振り向く女の顔は───。
「…あれ、」
「し、志摩く…」
予想外やった、正直。
クラスで一番地味で、御洒落も何もしとらん様な奴が。
まさかのまさか。
「御前かぁぁあぁ!!」
「!?」
思わず貯水タンクの上に立ち上がって指先を突き付けながら俺はシャウトした。
こんな落ちが、在ってたまるかとばかりに。