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「かァぐら。」

「何アルか?」


にへへ、とうれしそうに笑う総悟がベンチの丁度私の斜め後ろのところにもたれ掛かっていた。

いつもはにやにやと嫌らしく変態じみた笑顔しか浮かべないから、私も少しうれしい気持ちになった。


「しってるかィ?」

「何をヨ。」

「しってるよな?」

「何をヨ。」

「え、しらねーわけねーよな?」

「だから何をかきいてんだろーがヨぉぉ!!」


私がイラッとして声を荒げると総悟が顔を歪めた。

それから悲しそうな顔をして小さな声で、


「しらないんだったらいいけど。」

「総悟?ちょ、待つネ!」


そのまま立ち去ろうとする総悟を呼び止めるが、彼は構わずに歩く。

その丸まった背中は心なしか淋しそうに見えた。

何、私なんかしたアルか?


「そう、ご!」

「うぶっ!」


総悟は膝から崩れ落ちた。

何故ならば私が膝かっくんをしたからだ。


「いってェェェ!おまっ、絶対膝骨折した!膝骨折した!膝の皿取れたァァ!!」

「神楽様をなめるな!
…お前、何でそんな怒ってるアルか…?私、なんか嫌なことしたアルか?それだったら、ごめんネ。」


総悟は見上げた体勢のまま一瞬ぽかんとしていたが、すぐに心底可笑しそうに笑った。


「な、何で笑うネ!私は真剣に言ってるアルヨ!」

「ごめんごめん、俺がちょっと悲しくなっただけでィ。何でかわかるかィ?」

「全然わかんないアル!」

「即答かよ。しってた?今日はな、一年記念だぜ。」

「一年?」


ああ、思い出した。

総悟に告白されたのは、丁度一年前のこの季節だった。


「じゃあ、もう一年も経ったアルな……。」

「もっと短く感じるよな。」

「うん。」


それは、きっとこの一年がすごく楽しかったから。

総悟と一緒に笑いあって、いろんなことをして、とても充実した一年間だったから。

そうか、もう一年も経ったのか。

そう思うと笑みが零れた。


「何笑ってんだ。」

「ううん、忘れててごめんネ。」

「いいんでィ。そんなん関係なく、神楽は俺のこと好きだってわかってるから。」

「うわ、ナルシストアル。」

「そんな俺も好きなんだろ?」

「さあネ。」

「は、素直じゃねーのな。」「お前は素直すぎるアル。」


これから、楽しいことが沢山あるのだろう。

それと同じくらい辛いことも沢山あるはずだ。

でも、総悟と一緒なら、そんなの苦にならないくらい幸せでいられるはずだと、なんの根拠もないのに思う。

もしかしたら長く短い人生の中で、総悟より素敵な人と出会うかもしれない。

総悟より格好良い人がいるかもしれない。

総悟より性格の良い人を好きになるかもしれない。



だけどやっぱり、素直で、ナルシストで、馬鹿で、率直で、ドSだけど優しいお前が、
誰よりも一番大好きですけど何か?
























*みくず様(yogurt)
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