party time A


約束していた時間の五分前に待ち合わせ場所に到着すると、折原さんは既に居た。私の存在に気付き弄っていた携帯をポケットに入れて、小首を傾げた。

「おっ、やっと来たね。俺待ちくたびれちゃったよ。四木さんといちゃついたりしてたの?」

「…時間には正確なんですね、折原さん。」

あぁ、何故折原さんとパーティーに出席しなければならないのか。四木さんと出席ならもっとめかしこんだのに。

相変わらず余計なことを言う折原さんに対して少し嫌味を言うと、

「時間にはって何さ。情報も正確だよ?」

何が面白いのか、にこやかに笑いながら返してきた。

「…正確じゃない情報を売る情報屋なんて最低ですもんね。」

「俺には厳しいねえ。四木さんの前じゃ、猫被ってるのに。」

…誰のせいだと思っているのか。私だって折原さん以外にはこんな態度を取ったりしない。多分。

「…さすがに、いつもの格好ではないんですね。」

今日も黒のファーコートを着て来たら笑ってあげようと考えていたけど、残念ながら黒のスーツを着ていた。それにしても上質そうなスーツだ。

「あぁ。なまえも、いつもの格好じゃないね。」

私は普段は黒のパンツスーツを着ているが、パーティーなので派手すぎない黒のドレスを着ている。
…黒を選んだのは失敗だったかな。折原さんが白を選べば良かったんだけれど。…白、似合わなさそう…。

「何か失礼なこと考えてない?」

「いえ、別に。折原さんは白色は似合わないだろうなと思っただけです。」

「…まぁ、それは否定しないけど。」

自覚はあるらしい。ある意味白を着てほしいかも。
…って、こんなことを話している程、暇じゃなかった。

「そろそろ行きましょう、折原さん。」



私達は受付を済ませてから、パーティー会場へと足を踏み入れた。規模はそこまで大きくないが、会場には大勢の人間が居た。

今日の目的は、粟楠会と関係のある政治家のパーティーに出席して、粟楠会に不利な情報が流れていないか確認することだ。

通常ならば、いちいち出席するような真似はしない。今回は主催者の政治家が最近明日機組と繋がり始めたという情報を得たので、出席することになった。

この情報元は折原さんではない。折原さんに単独で裏を取るように依頼する予定だったが、このパーティーがあることを知り、ここで裏を取ることにしたのだ。

ちなみに、私も折原さんも面が割れているので、しっかりと変装している。ただ、あまり認めたくないが折原さんは端正な顔立ちをしているので、変装しても目立つ。

「…壁の方に行こうか。」

「…はい。」

潜入捜査は初めてではないが、やはり緊張してしまう。失敗して四木さんに迷惑が掛からないように、気を引き締めなきゃ。

移動する間に飲み物の入ったグラスを取り、壁に背を預けて会場に視線を巡らせる。談笑している人間が多いが、ここからでは会話は聞こえない。

「…さて、いつまでものんびりしていられないし、始めようか。」

少しの間、黙っていた折原さんは小さな声で呟いた。口元を緩めながら。たくさんの人間が居るから、楽しみなのだろうか。

「…くれぐれも、気を付けてくださいね。」

「あはは、俺を誰だと思ってるの?なまえこそ、気を付けるんだよ。」

小声で会話をして、折原さんは得意気な笑みを浮かべてから人混みを目指して歩き出した。
ここからは別行動だ。私は私で、情報収集をしなければ。折原さんに任せきりではいけない。そうでないと私が来た意味が無い。

ーー四木さんの役に立つために。

「…さて、と…。」

折原さんとは別方向の人混みを目指して歩き出して、ひとまず近くに居た人間に話し掛けることにした。





◆160922







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