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突然現れた怪人達に驚いているのは、暴走族やセルティだけではなかった。
バンから下りようとしていた門田達も、それを走って追ってきた帝人や杏里、なまえさえも、突然の乱入者に目を丸くしてその動きを止めている。

全く異なる動きをする二人の怪人が、物凄い勢いで暴走族達を無力化させていく。

「……い、一体……何が起きて……。」

杏里を追ってきたなまえは、少し乱れた呼吸を整えながら、小さな声で呟いた。

とりあえず杏里と共に此処から脱出しなければと考えて、なまえはゆっくりと杏里に歩み寄り、名前を呼ぶ。

「杏里ちゃん。」

「……! なまえさん……? どうして此処に……。」

名前を呼ばれた杏里は、まさかなまえが居るとは思っておらず、びくっと肩を震わせてから後ろを振り向き、小首を傾げる。

「くるちゃん達と逃げようと思ったんだけれど……杏里ちゃんが走って行っちゃったから……。」

「……えっと……気になりまして……。」

「危ないから、此処から離れ……きゃっ!」

歯切れの悪い言い方をする杏里に脱出を提案しようとする途中で、こちらにやって来たセルティが杏里を背中に乗せ、なまえは影で作られたサイドカーに乗せられ、危険地帯を離脱した。
門田達は帝人をバンに引きずり込んでガード下を後にする。

その光景を遠くから見つめていた黒沼青葉は、首を傾げながら独り言を呟いた。

「……えーと……。一体、何がどうなったの?」

しかし、背後にいる双子もそれに答えることは出来ずに、互いに顔を見合わせて首を傾げ合っている。

もっとも、この事件に関わった誰一人として、事態を完全に把握している者はいなかったのだが。



♂♀



「はぁ……疲れた……。」

あの後、皆と別れたなまえは新宿駅のホームの椅子に座っていた。

突然デスレースに巻き込まれたことによる疲労と携帯の充電が無い不安から、すぐに家に帰りたい気持ちになるも、この時間ならまだ波江が居るかもしれない。出来る限り臨也の仕事の邪魔をしたくないなまえは、近くで時間を潰す方が良いだろうかと悩む。

「……喉、渇いたな。」

最後に水分補給をしたのは青葉とカフェに入ったときだということを思い出して、とりあえず新宿駅近くのカフェに行こうと決め、椅子から立ち上がる。

そして、新宿駅の改札を通り、駅を出るとーー

「なまえ!」

「……臨也……?」

何故か、臨也がそこに居て、なまえの名前を呼んだ。それだけではなく、なまえに駆け寄り、人目を憚らずに抱き締めてきた。

「ど、どうしたの……?」

「……。」

今日はよく分からないことばかり起きると混乱するなまえに、臨也は何も答えず、ただ安堵したように息を吐き出した。
臨也に会うことが出来て嬉しいなまえは、右手でコートの裾を軽く掴む。人目が無ければなまえも抱き締め返したのだが、それは憚られた。

数分後、ようやく落ち着いたのか、臨也がゆっくりとなまえから離れた。

「臨也……?」

「……ごめん、仕事が一段落ついたからなまえに連絡したら、連絡が取れなかったから……。」

「……あ、ごめんね……充電が無くて……。」

普段は充電を切らすようなことは無いのだが、今日は運が悪かった。そのせいで臨也に心配を掛けてしまったのだろうと結論づけるなまえ。その後、気になっていることを問い掛ける。

「……波江さんは?」

「今日はもう帰ったよ。だから用事が無いなら、一緒に帰ろう。」

「……うん、帰る。」

臨也の返事に小さく頷き、なまえはそっと臨也の手を握った。そして二人でマンションに戻っていった。





◆170228







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