02


数日後 池袋 サンシャイン60階通りーー

「…今日はこれで終わりか?」

「そうだねー、まぁこんなところかな。」

遊馬崎と狩沢は二人とも両手に紙袋を持っている。相変わらずすごい買い物の量だなと半分呆れながら、門田は問い掛けた。一応満足したらしい狩沢は小さく笑う。

「ん?あそこに居るのって、なまえさんじゃないっすか?」

遊馬崎も同調しようとしたのだがーー前方になまえを発見して、それを二人に告げた。ちなみに、渡草は近くの駐車場に停めているバンの中で待機している。

門田達は目立つため、なまえも三人の存在に気付き、三人の元へと駆け寄った。

「こんばんは。」

「おう。バイトの帰りか?」

「うん。臨也と待ち合わせしてるんだけれど、ちょっと遅れるみたいで散歩してたの。」

挨拶を交わして、目的を告げるなまえ。その返答に、狩沢はにやにやと笑いながら言葉を紡いだ。

「イザイザとなまえちゃんは相変わらずラブラブだよねぇ。」

「そ、そうかな…?」

「そうだよ!ま、仲が良いのは良いことだけどさ。」

他人に指摘されて何だか少し恥ずかしくなり、なまえは小首を傾げた。狩沢は笑みを浮かべて何度も頷いた。

「…この前は、黄巾族とダラーズのことを教えてくれてありがとう。」

なまえは周囲に自分達以外の人間が居ないことを確認してから、小さな声でお礼を言った。結果として、真実をすべて知ることは出来なかったのだがーーなまえは今それを知らなかった。

「いや…気にすんな。役に立てたなら良かったぜ。」

門田はなまえが満足したなら、とブルースクウェア等のことは告げずに口角を上げた。遊馬崎と狩沢も同じように思ったのか、余計なことは言わなかった。

なまえが何かを言おうとすると、なまえの携帯の着信音が鳴り響いた。それは電話を告げるもので、なまえは携帯をカバンから取り出して、門田達に一言断り通話を始める。

「あ、ごめん、ちょっと待ってね。…はい、もしもし。」

『もしもしなまえ?ごめん、急に仕事が入っちゃって、もうちょっと時間かかりそうだから、何処かに入って待っててくれる?』

「うん、分かった。終わったら連絡して。」

『あぁ。じゃあ、また後でね。』

電話の相手は待ち合わせをしている臨也だった。手短に通話が済まされ、なまえは携帯をカバンに戻した。

「どうした?」

「もう少し時間がかかるみたい。」

「そうか。俺らは飯食いに行くが、なまえも来るか?」

「うーん、私もご飯の約束してるから…誘ってくれてありがとう。」

門田からの誘いは素直に嬉しかったものの、先に臨也と約束しているため、首を左右に振る。門田は小さく頷き、遊馬崎と狩沢を連れて渡草が待っている駐車場へと歩いていった。

三人と別れたなまえが何処に入ろうかと少しの間思案していると、突然誰かに肩を叩かれた。以前、岸谷森厳に同じようにされたことを思い出して、ゆっくりと後ろを振り返るとーー

「一人か?なまえ。」

「…平和島、くん。」

いつもと同じ、バーテン服を着た静雄が立っていた。岸谷森厳ではなかったことにほっと胸を撫で下ろす。

「うん、ちょっとね。平和島くんはお仕事終わったの?」

「あぁ。買い物して帰るとこだ。」

静雄の前で臨也の名前を口にするのは避けて曖昧に答えて、静雄はどうしたのかと尋ねると、どうやら仕事終わりらしい。

「そうなんだ、お疲れ様。」

「…また、ケーキ買いに行くからな。最近新商品は出たのか?」

「うん、最近はね…。」

約15分程その場でなまえのバイト先のケーキ等について話していたが、その話題が終わると、静雄が僅かに表情を引き締めて、

「なぁ…時間あるなら、どっかにーー。」

「ちょっと、なんでシズちゃんがなまえと一緒に居るわけ?」

なまえを誘おうとしたところで、タイミングを見計らったかのように、天敵の臨也が現れた。

「臨也…もう終わったの?」

「嫌な予感がしたから早く終わらせたんだけど…俺の直感は間違ってなかったよ。」

「…何しに来やがった!池袋には来んなって言ってるだろーが!」

なまえは早くに臨也と会えて嬉しかったが、静雄は決してそうではなかった。臨也も静雄もまさかお互いに会うとは思っていなかったため、二人とも不機嫌そうにしている。

「なまえと待ち合わせしてただけだよ。シズちゃんには関係無いから。」

「ちっ…さっさと失せろ。」

臨也に対してはかなり苛ついているものの、側になまえが居るため暴れるような真似はせず、いつもより低い声を出す。しかし、臨也も静雄に対して苛ついているため、あっさりと引き下がらなかった。

「シズちゃんに命令される筋合いは無いね。っていうか、俺が来なかったらなまえを何処かに誘おうとしてたよね?シズちゃんの入る隙間なんて無いんだけどなぁ?」

「っうるせぇ!さっさと失せろって言ったのが聞こえなかったのか!?」

よりによって臨也に聞かれたことを悔やみ、羞恥心を誤魔化すために大きな声を出したことで、周囲の人間が三人に視線を送った。臨也はわざとらしく溜め息を吐き、臨也と静雄を見守っていたなまえの手を取る。

「はいはい。シズちゃんの相手してる程暇じゃないし、行こっか。」

「う、うん。またね、平和島くん。」

最後まで静雄の神経を逆撫でするようなことを言い、臨也はなまえを連れてその場を立ち去った。一人でその場に残された静雄は舌打ちをして、苛々を抑えながら露西亜寿司へと向かった。





◆161127







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