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「ん?なまえちゃん、紀田くんと知り合いなの?」

「う、うん…少しだけね。」

なまえの反応に、狩沢は驚いたように問い掛けた。なまえは曖昧な返事をしながら、正臣について考えた。

ーーなまえの記憶にある正臣は、杏里と自分を助けてくれた陽気な高校生だ。それなのに、黄巾族というカラーギャングのボスだなんて、すぐには信じられなかった。

しかし、狩沢が嘘を言っているようには見えなかった。それに、もしも嘘なら門田辺りが否定しているだろう。

そして、門田が正臣についての話を口にした。

「…そういや、昨日、紀田が俺らのとこに来たぜ。」

「え?」

「"ダラーズのボスを教えてくれ"ってな。」

「…っ!」

その正体を知っているなまえは、思わず息を呑んだ。臨也に"ダラーズの創始者のことは誰にも話さないように"と言われているため、正臣に聞かれなくて良かったと思う反面、門田達にも話せず、なまえの表情が曇った。

そんななまえを見て、門田は何か言いたそうに口を開こうとするが、言葉を紡ぐことを阻むようにコーヒーを口に流し込んだ。

「…それで、紀田くんに…教えたの?」

門田程顔の広い人間なら創始者について知っていても何ら不思議ではないと考えたなまえは恐る恐る問い掛けた。門田は首を横に振り、自分が行ったことを伝えた。

「いいや、俺は知らねぇからな。…ただ、"ボスを知ってるって奴"を紹介したぜ。」

「…、それって…臨也…?」

敢えて名前を伏せた門田だったが、なまえは否定してほしいと思いながら、臨也の名前を出した。

「…そうだ。多分、紀田は臨也のところに行っただろうな。」

「…そっか。」

肯定されたことに更に表情を曇らせるも、予想外の出来事ではなかった。臨也の趣味は理解しているつもりだからだ。ーーただし、すべてを知っているわけではないが。

なまえは知らなかった。ダラーズの創始者である帝人と黄巾族のボスである正臣が親友であることを。そして、二人が想いを寄せている杏里が罪歌の持ち主であることを。

「…で、どうするんだ?」

「え?」

「今池袋で起こっていることを知って、なまえはどうするんだ?」

ーーなまえは、ただ知りたかっただけだ。賭けにこだわっているつもりはない。

門田の問いに、なまえはすぐに答えることが出来なかった。カップを両手で握り締めて、曇った表情のまま、自分はどうするべきなのか考えた。

「もー、ドタチン、なまえちゃんを苛めちゃ駄目だよー?」

「なんでそうなるんだよ…。」

黙り込んでしまったなまえを見て、狩沢は冗談半分に門田に言葉を投げ掛けた。その言葉に門田は溜め息を吐いてから、フォローを試みた。

「…悪い、悩ませるつもりで言ったわけじゃ…。」

「…ううん。私こそ、ちゃんと考えずに聞いちゃってごめんね。…臨也に、聞いてみるよ。」

門田達に教えてもらったことがすべて正しいか分からないが、なまえは臨也に話を聞くことが一番だろうと判断した。そう告げたなまえの表情は、もう曇ってはいなかった。

「…それが良いと思うぜ。ま、また困ったことがあったら言ってくれ。出来る限り、力になるからな。」

「そうだよ、なまえちゃん。もっとなまえちゃんと話したいしね!」

「二人の言う通りっすよ。遠慮する必要はないっすからね。」

「俺はそうだな…どっか行きたいところがあれば連れて行ってやるぜ。」

門田達の温かい言葉を聞き、なまえは今日門田達に対して初めて笑顔を見せた。





◆161112







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