06


翌日、バイト終わりに池袋を歩いていると、黄色の布を着けた人達がこちらに向かって歩いてきていることに気付いた。人数は三人、皆高校生くらいに見える。

あの人達、黄巾族っていうんだよね…。臨也に近付いちゃ駄目って言われたから、すれ違わないようにする方が良いのかな…?

私がぼんやりと考えながらゆっくりと歩いていると、黄巾族の人達がぴたりと足を止めた。そして、何故か分からないけれど、私を見ているような気がする。

「…?」

も、もしかして、ただ見てただけで絡まれちゃうのかな…?それなら今まで何回か見たことがあるのに…。運が良かっただけなのかな…。

黄巾族の人達が何やら小声で話しているのを見て、どうしたものかと私も足を止めた。ーーすると、誰かの手が私の右肩に置かれた。

「!?」

前方に気を取られていた私はびくっと身体を震わせて、ゆっくりと左側から後ろに身体を向けると、その途中で肩から手が離れた。そして其処には、ガスマスクを着けて白衣を身に纏う人間が居た。その風貌は、かなり目立っている。

「初めましてだね、折原なまえさん?」

「…!」

相手は私のことを知っているようだ。私が口を開こうとするとーー

「おっさん、おもしれー格好してんじゃん。」

「しかもナンパしてんの?」

「マジかよ。」

前方で立ち止まっていた黄巾族の人達がいつの間にか私とガスマスクの人の側に来ていた。それぞれ言いたいことを言って、にやにやと笑っている。もしかして、黄巾族の人達が見ていたのは、私の後ろに居たガスマスクの人かな…。

「君達には関係なかろう。」

「あ?んだとコラ。」

「黄巾族舐めてんじゃねーぞ。」

「ガスマスク野郎のくせに。」

返答が気に入らなかったのか、黄巾族の人達の口調が変わった。このまま此処に留まれば、確実に巻き込まれてしまうだろう。しかし、ガスマスクの人は面倒くさそうに呟いた。

「やれやれ、まさかまたカラーギャングに絡まれることになるとは。」

「…?」

「またって、…ん…?」

黄巾族の人達が何かを言おうとすると、三人の携帯の着信音が一斉に鳴り響いた。どうやら誰かからの連絡らしく、三人は携帯を手に取って操作している。

「…ちっ、準備するか。」

「あぁ。」

「覚えてろよガスマスク野郎!」

誰かからの呼び出しなのか、三人は立ち去っていった。これで危機は去った…と言うにはまだ早い。私も帰らないと。

「…あの、私もこれで、」

「私の話を聞いてからなら、帰って構わんよ。」

すぐに帰してもらえないらしい。それならばーー、

「…私に何のご用ですか、岸谷森厳さん?」

「おや、私のことを知っているのかね。まあ立ち話もなんだ…、あの店にでも入ろうじゃないか。」

【会うことはないと思うけど、ガスマスクを着けて白衣を着た男は岸谷森厳っていって新羅の父親だから、見掛けたら関わらないようにして。】

以前臨也に言われたことを思い出して、フルネームを口にすると、ガスマスクの人ーー岸谷くんのお父さんは何だか嬉しそうな声音に変わり、きょろきょろと辺りを見回した。そして、近くの喫茶店を指差して、私を誘った。

「…お断りします。」

「情報屋に何か言われてるのかね?」

「…それは、」

返事をする途中で、私の携帯の着信音が鳴り響いた。失礼だと分かっていながら、私は携帯を手に取り、通話ボタンを押してそれを耳に当てた。

『もしもし、なまえ?今すぐ帰ってきて。』

「…うん、分かった。」

『しつこいなら代わって。』

「大丈夫だよ、またね。」

電話の相手は、臨也だった。今、私が岸谷くんのお父さんと会っていることを知っているようだ。臨也に迷惑を掛けまいと返事をして、電話を切った。

「聞いていたとおり、随分過保護なようだねぇ。」

「…。」

誰に聞いたのか少し気になりながらも返事をせずに踵を返すと、岸谷くんのお父さんは私の背中に続けて言葉を投げ掛けてきた。

「今、この街で起こっていることは、情報屋が深く関わっている。いつまでも情報屋と一緒に居れば、君にも危害が加わるかもしれんよ。」

その言葉にも返事をせず、私は足早にその場から立ち去り、急いでマンションに戻った。





◆161027







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