2.0 06


「池袋最強…ですか?」

バイトを終えて、池袋駅に向かって歩いている途中、雑誌記者だという男の人に声を掛けられた。私はぴたりと足を止めてその人を見て、特に怪しい人では無さそうなので、話を聞くことにした。

「ええ、ご存知ですか?」

「うーん…、そうですね…喧嘩が一番強いという意味でなら…やっぱり、平和島くんかな…?」

臨也も喧嘩は強いと思うけれど、平和島くんと本気で喧嘩したら負けるだろうし…露西亜寿司のサイモンさんも強そうだけど…喧嘩してるところは見たことないしなあ…。
そう思い、私は高校の同級生の名前を口にした。すると、その人は少し驚いたように問い掛けてきた。

「もしかして、知り合いなんですか?」

「はい、高校の同級生なんです。」

「そうですか。仲は良かったんですか?」

「うーん…普通に話はしていましたけど…。」

私と平和島くんの関係に何故か興味を持ったようで、楽しそうに質問してくる。

仲が良かったか、悪かったか、どちらかといえば、良かったのだと思う。ただ、臨也が平和島くんのことを嫌っていて、平和島くんも臨也のことを嫌っていたから、多くの時間を過ごしたわけではない。

「その、あなたから見て、平和島静雄はどんな人物ですか?」

「…平和島くんは、…本当は優しいけれど、怒ったら怖い、かな…。」

高校時代の怒りの原因が臨也によるものが多かったということは言わないでおこう。もう既に臨也のことは知っているかもしれないけれど…まあ良いか。

「なるほど…。ありがとうございました。」

「いえ、それでは。」

ぺこりと頭を下げて、私はその場を立ち去った。



♂♀



「おかえり、なまえ。」

「ただいま。」

マンションに帰ると、臨也がソファでテレビを見ていた。挨拶を交わして、夕食後のデザートにと買ったスイーツを冷蔵庫に入れる。

そう言えば、と臨也に話し掛けながら、私もソファに座った。外では防寒に役立ったこのコートも、この部屋で着ていては暑いだけで、ボタンを全部外してコートを脱ぐ。

「帰りね、雑誌記者の人に声を掛けられたんだ。」

「…それって、贄川って名前の人?」

「名前は知らないや…帽子を被って、コートを着た男の人だったよ。」

「多分同じ人だな。俺のところにも来たよ。」

お互いに名前を告げなかったが、私に尋ねた雑誌記者と臨也を尋ねた雑誌記者は同一人物なのだろう。

「それで、なまえは誰って答えたの?」

「…平和島くん。」

「…俺もだよ。やっぱりそうなるよねえ。」

溜め息を吐いた臨也は、リモコンを使ってテレビを消して、少し離れたところに座っていた私の隣に座ってきた。そして、肩を抱き寄せられた。

「臨也…?」

「…くっつきたくなっただけだよ。」

平和島くんだって答えたから思うところがあったのかと思ったけれど、そうではないのかな…?
よく分からないけれど、そのまま体重を預けると、臨也は小さく笑った。



♂♀



《知ってますか!今日の通り魔の被害者、あの"東京ウォリアー"で、東京災時記の記事書いてた人らしいですよ!》

【へー。雑誌の記者さんなんですか。】

[…え、本当ですか?]

《もー、私が嘘吐いたことなんてありましたっ?》

[無事なんですか?]

《なんかなんかー、意識不明の重体らしいですよ!よく分かりませんけど、刺し傷以外にも、なんだか体中に擦り傷があったって。でも、その傷はもうかさぶたになってたから、きっと昼頃に受けた傷だろうって話ですよ!》

ーー罪歌さんが入室されましたーー

《キターーーッ!》

[あ。]

【あれ?】

{今日、斬った}

《斬りたいのはこっちだってんですよ!もー!》

{人、斬った。でも、まだ、駄目}

{もっと、愛さないと}

【なんだか不気味ですねえ。】

《でも、前よりも少し、文章がまともになってるような…。》

【アクセス禁止とか出来ないんですか?】

《んー。やってますよ…でも、駄目なんです。》

{もっと、斬らないと}

【…でも、人を斬ったのなんだのって…。】

《…あ、太郎さんもそう思います?》

【通り魔だったりして。】

《あはははは。それナイス。》

{斬る続ける}

[…本当に、斬り裂き魔と関係あるような。]

《そう言えば…私が新しい被害者が出たっていう日に必ず出てますよね。》

【必ずっても、まだ2回じゃないですか。】

{最後に、近付く、斬る、私、愛する}

{目的、見つけた、愛する、見つけた}

{平和島平和島平和島平和島平和島}

{静雄静雄静雄静雄静雄}

{愛する静雄斬る平和島私が平和島に斬る静雄愛する}

【え?静雄さんの知り合いなんですか!?】

{静雄、静雄、静雄}

内緒モード【…臨也さん。】

内緒モード《…言いたいことは分かるけど、こっちが聞きたいなあ。》

{母の望み、それ、私の望み、同じ}

{愛する愛する愛する愛するそのためにそのために生まれた生まれた生まされた私私我我我}

内緒モード《ちっ、シズちゃんの関係者か…?いや…シズちゃんがこんなウザい奴を生かしておくわけないか。》

内緒モード【とりあえず、落ちた方が良さそうですね。】

【じゃあ、一旦落ちますーー】

[あ、じゃあ私もー]

ーー罪歌さんが退出されましたーー

ーー太郎さんが退出されましたーー

[ありゃ、ちょうど…。]

《どっちにしろ、今日はこれで解散ですねー。》

[おやすー。]

《おやすみなさい〜。》

ーーセットンさんが退出されましたーー

ーー甘楽さんが退出されましたーー

ーー現在、チャットルームには誰もいませんーー





◆161010







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